(ブルームバーグ):セブン&アイ・ホールディングスが3日、井阪隆一社長(67)を退任させる方向で最終調整に入ったと、日本経済新聞が報じた。後任として、社外取締役で西友の最高経営責任者(CEO)などを務めたスティーブン・デイカス氏(64)を起用する方向だという。
近くセブンが取締役会などを開き正式に決める見通しで、前身会社のイトーヨーカ堂などを含めてセブンで外国人がトップに就任するのは初だと、日経が3日午前に報じた。同日午後には、買収案を検討する特別委員会委員長について、社外取のポール与那嶺氏(67)で調整しているとも報じていた。同氏は米公認会計士の資格を持ち、三井住友銀行の社外取なども務める。
セブンを巡っては、経営陣が参加する買収(MBO)について、提案していた創業家から買収に必要な資金調達のめどが立たないと連絡があったと発表していた。セブンは、買収を提案してきたカナダのアリマンタシォン・クシュタールとの交渉に臨むか、自社単独での成長を目指すかの二択を迫られている。日経によると、トップ交代で海外市場での展開を広げる自社単独路線を株主や株式市場に理解してもらう考えだという。
セブンは経営体制に関する報道に対して、同社が発表したものではなく、決定している事実はないとの声明を発表した。
報道が伝わると、セブン株は上げ幅を拡大し、一時前週末比4.6%高の2243円を付けたが、午前の終値は2166円だった。オルタス・アドバイザーズの日本株戦略責任者、アンドリュー・ジャクソン氏は、報道に対して新経営陣の下、単独での成長を目指しクシュタールの買収提案に対抗しようとしていると指摘。日本企業の価値向上には買収が有効であるが、同社の買収提案に対抗する動きはそれに反しているとし、株価の上昇は一時的に終わったと指摘した。
モーニングスターのアジア株式調査部ディレクター、ロレイン・タン氏は、全株主が享受できる利益を考慮しつつ、セブンの時価総額をクシュタールの提示額と同じ水準に引き上げるために、セブンが単独で達成できることをデイカス氏には検討してほしいと述べた。まずは、実現可能な計画を立てる必要があるとした。
デイカス氏は製造業を中心にさまざまな会社でキャリアを重ね、ファーストリテイリングやスシローグローバルホールディングス(現FOOD&LIFE COMPANIES)など日本企業の経営幹部を務めたあと、22年5月にセブンの社外取締役に就任。クシュタールからの買収提案を受けて設立された特別委員会の委員長として提案の妥当性を検討していた。
井阪氏は、1980年にセブン-イレブン・ジャパンに入社し、2009年に同社の社長に就任した。15年から16年にかけて米ヘッジファンド運営会社サード・ポイントが、セブンのCEO選びで世襲を避けるよう求めた中で、井阪氏は16年にセブン社長に就任した。
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--取材協力:横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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