(ブルームバーグ):立憲民主党は日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)を活用し、分配金を次世代支援に充てるよう求めている。少子化対策に加え、高校授業料無償化などを想定しており、今国会で他の野党と共同での法案提出を目指している。
階猛衆院議員が18日、ブルームバーグとのインタビューで語った。階氏は、中央銀行がリスク資産を「持っていること自体が異常」と強調。さらに含み益を国民に還元せずに「宝の持ち腐れ」となっていることも問題だと指摘した。階氏は立民の「次の内閣」でネクスト財務金融大臣を務めている。
立民は2024年の通常国会でも「日銀保有ETF活用法案」を衆議院に提出した。日銀が保有するすべてのETFを要求されたときのみ現金化する「交付国債」で政府が買い取り、分配金を少子化対策の財源に充てる枠組みだったが、同年秋の衆院解散に伴い審議未了で廃案となった。少数与党となっている今国会で改めて提出する法案では対象を広げる考えで、学校給食や高校授業料無償化、奨学金制度の拡充などを想定しているという。
日銀が保有するETFは昨年3月末時点で簿価37兆円、時価で74兆円に上る。昨年3月にはマイナス金利解除、7月には国債購入の減額計画を発表するなど金融政策の正常化が進むが、保有ETF処分の見通しは立っていない。日銀が金融危機などの際に金融機関から買い入れた株式の売却完了が近づく中、保有ETFの処分が課題として浮上し、国会でも議論が活発化する可能性がある。
国会審議、「フェーズ変わった」
階氏は、今国会では衆院財務金融委員会でも立民の所得税法改正案に対する修正案が審議の俎上(そじょう)にのぼるなど「フェーズが変わった」と評価し、法案成立への意気込みを語った。
日銀保有のETFを巡って日本維新の会の前原誠司共同代表は、立ち会い外の自社株買いに応募し、奨学金の返済免除に必要な9.4兆円の財源に充てる案を昨年12月に明らかにしている。一方、国民民主党は公約に子育て支援の財源として「教育国債」の発行を掲げている。
岸田文雄前首相は在任中、昨年4月の国会答弁で、ETFの分配金収入を子育て支援財源とする立民の案について「考える余地はない」と否定。同収入は国庫納付金の一部として国の一般財源に活用されており、仮に子ども・子育て支援に充てれば一般財源が不足するとの見解も示していた。
階氏は日銀が政府に納める国庫納付金は、決算剰余金として国債償還費や防衛費などに使われていると指摘。仮に政府がETFを買い取れば分配金収入を同様の支出に充てた上で、売却益も政府の判断で活用できるようになり、日銀がよりも政府が持つ方が国民に対する恩恵が大きいと述べた。
1991年に東京大学法学部を卒業後、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)に入行。弁護士登録後は社内弁護士として契約法務などに携わる。07年の衆院岩手1区の補欠選挙で旧民主党から出馬し初当選した。当選7回。与党時代は総務大臣政務官などを務めた。

他の発言
- 円安による物価高を軽減するためにも、緩和的でも引き締め的でもない中立金利を明示した上で、現在の金利水準は中立金利から距離があることを示すべきだ
- 2025年度予算案の修正が全く応じられなければ「採決ということにはならない」
- 立民が求める3兆8000億の予算修正が認められることが「大原則」-予算への賛成
--取材協力:藤岡徹、竹生悠子.
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