(ブルームバーグ):元日本銀行副総裁の中曽宏氏は18日、日銀は当面、1%程度を目指して政策金利を引き上げていき、その後も利上げの余地を模索する展開になるとの見方を示した。
大和総研理事長の中曽氏は日本記者クラブで講演し、日銀の金融政策運営について「当面は1%ぐらいを目指して利上げを進めていって、その後は経済・金融情勢を踏まえてさらなる利上げの余地を探っていくことになるのではないか」と語った。
利上げ継続の環境はそれなりに整っているとし、「毎回の金融政策決定会合で適切に判断して、利上げの継続をできるところまでしていったらいい」と指摘。「無理のない範囲で利上げを継続し、結果として政策対応余地を確保するのも政策当局としては重要な視点ではないか」とも述べた。
日銀は1月の金融政策決定会合で昨年7月以来の利上げを決め、政策金利を17年ぶりの0.5%程度に引き上げた。経済・物価が見通し通りに推移すれば、利上げで緩和度合いを調整していく方針を維持した。市場の関心が次の利上げ時期とペースに集まる中、中曽氏は政策金利が1%を超える水準まで引き上げられる可能性に言及した。

植田和男総裁は1月会合後の記者会見で、今後の緩和度合いの調整について、従来の利上げの効果を確かめつつ「段階的に動いていくのが適切な対応」と指摘。緩和的でも引き締め的でもない名目中立金利は日銀の分析で1-2.5%に分布しているとし、追加利上げ後も「まだ相応の距離がある」との認識も示した。
中曽氏は、利上げは慎重に進める必要があるとした上で、コミュニケーションを工夫する必要性も指摘。「毎回、判断の背景や考え方をしっかり一貫した形で説明することが、市場からの信頼を高めることにもつながる」と述べた。
日本経済の先行きに関しては、実質賃金の改善が個人消費を下支えすることが期待されるほか、米国経済も当面は底堅く推移すると予想し、世界経済に予想外の混乱が生じない限り、「大きく下振れることはない」との見方を示した。
日銀の追加利上げ観測を背景に、債券市場では長期金利の指標となる新発10年債利回りの上昇が続いており、18日には1.43%と2009年11月以来の水準に上昇した。金利スワップ(OIS)市場は日銀の利上げを6月に6割の確率で織り込んでいる。
(説明と金利動向を追加して更新しました)
--取材協力:日高正裕.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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