みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行は18日、元行員1人が貸金庫から顧客2人の資産を盗んでいたと発表した。被害は2019年に発覚し、被害総額は現金数千万円だった。盗んだ元行員は発覚直後に懲戒解雇処分とした。

広報担当者によると、被害は1つの支店で発生した。被害者となった顧客とは個別に協議し、顧客との関係なども踏まえて、公表は実施していなかったと説明した。真摯(しんし)に対応し、顧客からの理解は得ているという。同行は今年1月16日から貸金庫の新規受け付けを原則停止している。

みずほ銀行の看板

貸金庫からの窃取は昨年、三菱UFJ銀行などでも発覚しており、顧客の信用で成り立つ銀行業務の根幹を揺るがしかねない事態となっている。地方銀行を含めた各行は管理の高度化を進めているが、貸金庫ビジネスそのものの在り方も改めて問われそうだ。

加藤勝信金融相は18日午後の衆議院財務金融委員会で「こうした事案が続くということは、銀行のサービスのみならず、金融機関に対する信頼といった問題でいろいろ懸念が生じることになりかねない」と話し、足元での金融庁などの対応を通じて「しっかりフォローアップしたい」と述べた。川内博史衆院議員(立憲民主党)の質問に答えた。

また、同委員会で金融庁の伊藤豊監督局長は、みずほ銀の事案の発覚当時に同行から態勢整備についての報告を受けたと説明。その上で「今後どういう行政対応を取るかは何とも申し上げられない。必要があれば厳正に対応したい」と述べた。

川内議員はブルームバーグの電話取材に、金融庁から「貸金庫からの着服事案が計3件あったとの説明を受けた」と答えた。

三菱UFJ銀は昨年11月、元行員が東京都内の複数の支店で貸金庫から顧客の資産を盗んだとして懲戒免職処分にしたと発表した。半沢淳一頭取は「信頼、信用の上に成り立っている銀行ビジネスの根幹を揺るがす」として陳謝、月額報酬の減額処分を受けている。

貸金庫の窃取事案は、三菱UFJ銀のほか、首都圏などを地盤とするハナ信用組合も昨年2月に横浜支店の元職員が顧客の貸金庫鍵を不正に複製して現金を盗んでいたと発表していた。

貸金庫ビジネスのリスク

全国銀行協会は三菱UFJ銀での事件発覚後、会員行に貸金庫の管理態勢の点検実施を要請した。福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は今月13日の定例会見で「貴重品や重要書類を安全に保管しておきたいという一定のニーズがある。今後の貸金庫サービスの在り方については、こうしたニーズや各行のビジネス戦略も踏まえつつ、各会員行においてそれぞれが検討していくものだ」との考えを示した。

川内議員は「金融機関は最も信用を大切にしなければならないため、管理が難しい貸金庫ビジネスを展開することのリスクを考えていく必要がある」と指摘。その上で、「顧客保護の観点から金融庁の有識者会議でも検討が進んでいるので、専門家同士の議論を期待したい」と述べた。

金融業界を巡っては、野村証券の元社員が顧客に対する強盗殺人未遂などの罪で昨年起訴されるなど不祥事が相次いでいる。

(4段落目に国会での加藤金融相の発言を追加するなどして記事を更新します)

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