温厚な国民性で知られるカナダ人がここにきて怒りを爆発させている。引き金はトランプ米大統領が発表したカナダに対する25%の関税発動の決定だ。

トランプ氏が1日、予告通り関税発動の大統領令に署名すると、首都オタワでの北米プロアイスホッケーNHLや主要都市トロントでの米プロバスケットボールNBAの試合では、ファンが浴びせるブーイングで米国の国歌「星条旗」の演奏がかき消された。ソーシャルメディア上では、米国製品の不買運動(ボイコット)への呼びかけが相次ぐ。

怒りはそれだけでは収まらない。冬の間はフロリダ州など暖かい地域に購入した別荘で過ごす「スノーバード」と呼ばれるカナダ人の間では、米国の物件を売りに出す動きが出ている。

最大都市トロントが位置するオンタリオ州は、トランプ大統領の支援者であるイーロン・マスク氏が率いる米宇宙開発企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」との契約を打ち切ると宣言した。

カナダ国民はすでに、トランプ氏が繰り返す「カナダを米国の51番目の州にすべきだ」との発言に憤慨していた。直近の世論調査によると、カナダ国民の9割がこれに反対している。

カナダ国民にとってさらに衝撃だったのは、トランプ氏が関税発動の理由として、米国への不法移民と合成麻薬フェンタニルの流入阻止を挙げたことだ。カナダ経由で流れる不法移民や違法薬物はメキシコと比較すると、極めてわずかだ。

陸続きの米国を長年にわたり同盟国以上の存在として見てきたカナダ国民にとって、今回の関税は裏切り行為に等しい。

カナダのトルドー首相は3日夜、トランプ氏との電話会談を受け、米国がカナダに対して計画していた関税賦課が少なくとも30日間延期されることになったと発表した。

それでも、トランプ氏が両国の経済関係を根本的に再構築しようとする可能性に対して、カナダの産業界は身構えている。

何十年にもわたり米国と密接な関係を築いてきたカナダの自動車業界は、とりわけ大きな打撃を受けるだろう。米フォード・モーターが国境を挟んでデトロイトの反対側に位置するオンタリオ州ウィンザーで自動車生産を開始したのは1920年代のことだ。

「100年以上にわたる努力が徐々に損なわれていく」。ウィンザーに拠点を置く自動車部品会社ラバル・ツールのジョナサン・アゾパルディ最高経営責任者(CEO)はこう話す。

同氏の工場では現在、アラバマ州やテキサス州のテスラ工場に送られるサイバートラック向けの金型を製造している。「こうした関係が途切れれば、二度と元に戻らないこともあり得る」と同氏は述べた。

原題:Canadians Boo US Anthem as They Seethe Over Trump Tariff Threats(抜粋)

--取材協力:Jacob Lorinc、Derek Decloet.

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