(ブルームバーグ):トランプ米大統領は23日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でオンライン演説し、サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)に「原油価格を引き下げる」よう要請すると述べた。原油増産を後押しすることでロシアへの圧力を強め、3年近く続くウクライナでの戦争終結に結びつけたい考えだ。
演説で「もし価格が下がれば、ロシアとウクライナの戦争はすぐに終わる。今は価格が十分高いため戦争は続くだろう」と語った。
サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が米国への投資と貿易を6000億ドル(約93兆7000億円)拡大すると約束したこともアピールし、それを1兆ドルに引き上げるよう迫ると述べた。
さらにOPEC加盟国が原油価格の引き下げにもっと早くから取り組んでこなかったことに不満を表明。OPECが原油価格を引き下げればインフレ率が低下し、金利引き下げが可能になるとの見方を示した。また、そうすることでロシアにウクライナでの戦争を終わらせるよう圧力をかけることができるとも述べた。

その上で「原油価格が下がれば、私はすぐに金利引き下げを要求する」と主張。「同様に、世界中で金利が引き下げられるべきだ」と述べた。
トランプ氏の発言を受けて、米国株は史上最高値に向かって上昇。原油価格が下落すればインフレ懸念が緩和するとの見方から米2年債利回りは低下した。
金利上昇で経済的惨事
トランプ氏は金利の即時引き下げ要求に関連し、金利上昇により財政赤字が膨らみ、バイデン前政権下で経済的惨事を招いたと非難した。
「前政権の失政による経済の混乱に対峙(たいじ)することから始まる」とし、「米政府は過去4年間に8兆ドルもの無駄な赤字支出を積み上げ、国家を滅ぼすようなエネルギー規制や有害な規制、隠れた税金をかつてないほど課してきた」と続けた。
一方で、トランプ氏はソフトバンクグループなど3社による大型人工知能(AI)インフラ投資計画など、米国への投資を表明した企業を称賛した。
関税で製造業回帰
トランプ氏はさらに、関税を使って米国への製造業回帰を目指す考えも改めて表明。各界のリーダーを前に、第2次政権では関税を使って製造業の国内回帰を目指すと強調した。
「あなた方が決めることだが、米国で商品を製造しないのであれば、関税を支払わなければならない」と話した。
国内政策の優先事項としては、減税延長や法人税率引き下げへの意欲を改めて表明。ただ、法人税減税に関しては米国で商品を製造する企業のみが恩恵を受けるとの考えを示し、「米国で商品を製造しているなら、われわれはそれを21%から15%に引き下げるつもりだ。インフレを抑制し、雇用も増えるだろう」と述べた。

欧州を批判
欧州に関しては、アップルやアルファベット傘下のグーグル、メタ・プラットフォームズなどに巨額の制裁金を科している点などに言及。「欧州連合(EU)はわれわれを非常に不公平に、ひどく扱っている」とし、欧州諸国が税や規制の負担で米企業を標的にしていると述べた。
トランプ氏は「好むと好まざるとにかかわらず、これらは米企業だ」とし、「私が知る限り、それは課税の一形態だ。われわれはEUに対して非常に大きな不満を抱えている」とコメントした。
一方、トランプ氏は質問に答える形で、企業が高額なエネルギーコストに直面し、国際競争力の維持に懸念が出ている欧州に対して、米国のエネルギー供給を保証するとも指摘。「取引を成立させれば、手に入れることができる」と述べた。
戦争終結に向け
来年のダボス会議までにロシアとウクライナの和平合意が実現するかとの質問を巡っては、「ロシアに聞く必要がある。ウクライナは取引する準備ができている」と発言。ロシアのプーチン大統領の判断次第だとの考えを示唆した。
さらに和平合意を実現する上で、仲介役としての中国の関与に期待を表明。「中国が戦争を止める手助けをしてくれることを期待している。中国はこの状況を巡り大きな影響力を持っている」と述べた。
また、この問題について中国の習近平国家主席との17日の電話会談で、「うまくいけば共に協力して、集結させることができる」と伝えたと明かした。中国側は両首脳が会談で「ウクライナ危機について意見交換した」と発表したが、これ以上の詳細は明かさなかった。
暗号資産・AIで行政措置
トランプ氏は23日、暗号資産(仮想通貨)と人工知能(AI)に関する行政措置にも署名した。黎明(れいめい)期にある両産業の追い風となる可能性がある。
新政権で暗号資産とAIの責任者に起用されたデービッド・サックス氏もその場に同席した。
暗号資産に関する措置では、政策についてホワイトハウスに助言する作業部会が設置される。これには財務省や司法省、証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)など主要な連邦機関が関与する。
作業部会に対しては、規制の枠組みやデジタル資産備蓄に関する評価を含めた立法化案について勧告する報告書を、約半年以内に大統領令に提出するよう求めた。
サックス氏はトランプ氏に向かって、この作業部会が「あなたのリーダーシップの下で、米国を暗号資産の首都にする」と述べた。
さらにAIに関する措置により、米国が「AIで世界の覇権を握り、リードする」と述べた。
原題:Trump Browbeats Davos Elite to Curb Oil Prices, Interest Rates、Trump Blasts EU Regulators for Targeting Apple, Google, Meta、Trump Looks to China to Help Press Putin Into a Deal to End War、Trump Signs Executive Actions Related to Cryptocurrency, AI (3)(抜粋)
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