山崎元財務官の「介入のススメ」
トランプ大統領の再登場を円安修正にうまく使うべきだという意見もあります。14日付の日経新聞に掲載された山崎達雄元財務官インタビューは傾聴に値します。この中で山崎氏は今の円ドルレートが「実力に見合っていない」とした上で、投機筋が作り出した過度なドル高や円安には「介入で毅然と対応するべきだ」「トランプ氏も介入を容認するだろう」と語っています。
その上で山崎氏は、アメリカの競争力強化を目指すトランプ氏の「ドルが高過ぎるとの認識は変わっていないだろう」という見立てを示し、「日米が協調して『高過ぎるドル』を是正すべきで、関税強化よりは合理的」と主張しています。
財務官と言えば、日本の通貨政策の中心、いわば通貨当局そのものです。現職ではないとは言え、元財務官がここまで言うのですから、個人によって濃淡はあるにしても、通貨当局内で一定、共有されている考え方だと受け止めるのが自然です。
次期財務長官「ドル高で基軸通貨の維持」
その一方で、トランプ氏のドル安志向もかつてほどではないとの見方もあります。16日の議会公聴会で、ベッセント次期財務長官は、中国やロシアに対抗するためにも、「基軸通貨の維持を確実にすることが何より重要だ」と述べた上で、関税引き上げによる輸入インフレをドル高が緩和する効果にも言及し、ドル高容認をにじませました。
トランプ氏自身も含め政権内で、今後、ドル政策をめぐってどんな綱引きが行われるのか。また、その間隙を縫って、日本の通貨当局がドル高円安是正に向けて、何か「仕掛ける」ことはあるのか。派手な関税戦争の裏側で、通貨当局間の水面下の駆け引きが始ろうとしています。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)