(ブルームバーグ):国内の新規株式公開(IPO)市場において、金利高などを背景に企業の質をより見極めようとする動きから、小規模案件の1件当たりの時価総額水準が今年切り上がっていくと大和証券ではみている。
大和証グローバル・インベストメント・バンキング担当付公開引受担当理事の松下健哉氏は、ブルームバーグとのインタビューで、IPO件数が直近で最多だった2021年と比べて、投資家の目線が「大きく変わっている」と指摘。小規模案件の時価総額は「100億円前後から200億円前後と底上げされていくのではないか」との見通しを示した。
ブルームバーグのデータによると、24年の国内IPOにおける公開価格を基にした時価総額で50億円未満だったのは2年連続で30件を割り込んだ。平均時価総額は約420億円と18年以来の高水準だった。IPO件数は85件と前の年から13件減少したが、東京地下鉄(東京メトロ)の約7000億円やキオクシアホールディングスの約7840億円といった大型案件があった。
松下氏によると、21年は新型コロナウイルス禍後の低金利や金融緩和で投資家のリスク志向がかなり高まっていたことから、赤字やバリュエーションが高くても許容されていた一方、足元では米金利の上昇などを受けて、より企業の成長性を見極める動きが強まっているという。
ヘアケア製品などを手掛けるファイントゥデイホールディングスは昨年12月、IPO価格の仮条件決定日に上場延期を発表。事情に詳しい複数の関係者によると、バリュエーション(企業価値評価)を巡り、投資家と企業側の目線が一致しなかったことが背景だといい、計画通りに上場を果たすことはできなかった。
松下氏は成長期待から注目するIPO銘柄について宇宙関連を挙げた。「まだ利益が出ていないが将来の業績に期待が持てそうな企業は赤字でも上場してきている」と説明。直近で上場した主な関連銘柄には、アストロスケールホールディングスやQPS研究所、ispace、SYNSPECTIVEなどがある。バイオテクノロジー関連には米国の投資家を中心とした需要があるとも述べた。
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