(ブルームバーグ):台湾ドルがアジアで最も優れたキャリートレード通貨として中国人民元を追い越そうとしている。金利と為替の変動リスクが低いためだ。
台湾ドルを借りて、金利が高めの通貨の投資するという戦略はここ1カ月間、アジア通貨の中で人民元に次いで2番目に高いリターンを生み出している。リスク調整後の相対リターンを測定するシャープレシオが示した。
アナリストらによれば、台湾ドルが近く人民元に代わって、アジアで最も選好されるキャリートレード通貨となる公算が大きい。
中国当局が人民元を支えるため行っている取り組みは、金利に大きな変動をもたらし得るが、台湾の中央銀行はより柔軟な対応が可能だ。
台湾ドルが値下がりすれば輸出主導の台湾経済が恩恵にあずかり、人工知能(AI)ブームを背景とする台湾株式市場への資本流入を促すことができるためだ。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアジア外国為替・金利ストラテジスト、スティーブン・チウ氏は、「オフショア人民元と並んで、台湾ドルはアジアで資金調達に適した通貨の一つだ。最近の人民元は介入リスクによりショートスクイーズ(踏み上げ)の可能性が高まっているため、台湾ドルがより魅力的になっている」と述べた。
アジアでは、円は日本銀行による利上げサイクルのただ中にある。他の潜在的な資金調達通貨はショート(売り持ち)とするコストが高くなっているか、ボラティリティーが高水準だと同氏は指摘した。
中国人民銀行(中銀)が第2次トランプ米政権発足後の関税引き上げを見越して通貨防衛を強化しているため、キャリートレードの資金調達手段としての人民元の魅力が低下。
人民銀は毎営業日設定する中心レートや流動性吸収、口先介入を通じ、元高誘導を図っており、ここ1カ月でオフショア人民元はアジアで3番目に変動の激しい通貨となっている。
一方、台湾ドルは今週、心理的な節目とみられていた1ドル=33台湾ドルを超える安値に下落。約9年ぶりの台湾ドル安水準となり、資金調達通貨として一段と魅力的に見え始めている。
HSBCホールディングスのアジア外為調査責任者ジョーイ・チュー氏によると、トランプ政権の積極的な貿易政策により米連邦準備制度のハト派スタンス後退リスクが強調され、台湾ドルは他のアジア通貨と共にさらに値下がりする可能性がある。
「ファンダメンタルズが堅調な台湾経済は、目先の変動を乗り切るには比較的有利な立場にある」と同氏は分析。台湾中銀による積極的な為替介入のリスクは低いとの見通しも示した。
原題:Taiwan Dollar Set to Replace Yuan as Asia’s Top Funding Currency(抜粋)
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