(ブルームバーグ):日本の銀行株に逆風が吹き始めた。辞任を表明した石破茂首相の後任候補の一人に高市早苗前経済安全保障担当相が浮上したためだ。
大胆な金融緩和や積極財政を主張してきた高市氏が首相に就任すれば、日本銀行の利上げが遠のく可能性がある。8日は次期政権の経済対策への期待から東証株価指数(TOPIX)が1.1%上昇する中、TOPIX銀行業指数は0.5%高にとどまった。
2023年に植田和男氏が日銀総裁に就任し、段階的な利上げや国債買い入れ縮小など過去の大規模緩和策を修正し始めてから、銀行株は日本株市場で最もパフォーマンスの高いセクターとなってきた。23年4月以降の銀行業指数の上昇率は139%と、TOPIXの2倍以上だ。

三井住友DSアセットマネジメントの武内荘平シニアファンドマネジャーは、「高市氏が首相になると日銀の利上げは難しくなり、金融株の収益の伸びが鈍化するという連想が出ている」と話す。
オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場が織り込む0.75%への利上げ時期は、1週間前の来年1月から来年4月にずれ込んだ。
高市氏が首相となっても金融・財政両面で大幅な緩和政策を実施するのは現実的ではないとの声も多い。
ソニーフィナンシャルグループの渡辺浩志金融市場調査部長は、「消費者物価指数(CPI)が3%の時に経済を過熱させたりインフレを加速させたりするような政策は取りづらく、拡張財政や低金利政策の織り込みはマイルドになっている」と指摘する。
また、自民党総裁選の行方もまだ不透明だ。市場の一部では、高市氏より小泉進次郎農相が優勢との見方もある。
とはいえ、既に割高感が出始めている銀行株にとって、利上げ期待の後退は新たな重荷だ。銀行業指数の予想株価収益率(PER)は12倍程度と、近年の最高水準に近い。金利水準や株主資本利益率(ROE)が日本よりはるかに高い米国の銀行株指数の予想PER12.5倍とも差はなくなっている。
コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、リチャード・ケイ氏は、利上げに否定的な高市氏が首相となれば、「日銀の金融政策変更を材料に4年間続いてきた銀行株の好パフォーマンスは、大きな試練を迎える」と述べた。
--取材協力:横山桃花、田村康剛、堤健太郎.
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