(ブルームバーグ):約2カ月前の時点では、電気自動車(EV)メーカー、米テスラの株価は、上場後の約15年間で3度目となる年間ベースの下落に向かっていた。
しかし、同社株はここ7週間で急伸し、S&P500種株価指数の構成銘柄で年初来パフォーマンス上位に躍り出た。
反転のきっかけは何だったのか。会社の業績ではない。同社製EVの需要は依然として不安定で、先行きはますます不透明に見えるからだ。
投資家はそれよりも、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が大統領選中にトランプ氏を積極的に支援し、トランプ次期政権で非公式な役割を担うことを政治的手腕として評価した。
年初から米大統領選前までテスラ株は2.3%下落していた。しかし、大統領選投票日以降は73%値上がりし、年初来の上昇率は69%となった。同社が根本的に変化していないにもかかわらず、時価総額は2カ月弱で5720億ドル(約89兆6000億円)増加し、約1兆4000億ドルに達した。

テスラ株は週間ベースで2週連続12%余り上昇した後、先週は3.5%値下がり。米金融当局のタカ派転換が幅広い株価下落につながった。21日はテスラがS&P500種構成銘柄に採用されてから4年目にあたる。
同社はコメント要請に応じていない。
トランプ氏のEV嫌いはよく知られているものの、投資家はマスク氏が次期政権と引き続き緊密な関係を維持することで、テスラが目指す完全自動運転車の開発が容易になると期待しているようだ。複数のウォール街のアナリストは、同社の目標株価を大幅に引き上げた。
ただ、同社の24年と25年、26年の利益・売上高予想は、今年に入り大幅に引き下げられている。ロボタクシー(無人タクシー)構想がいつから収益化できるかも依然不明だ。今後数年の不透明感から、テスラの驚異的な時価総額が不安定な基盤の上に築かれていると懸念する投資家もいる。
ウィズダムツリーのグローバル調査責任者クリス・ガナッティ氏は、「テスラ株には25年に大きなハードルがある」とし、「ここから上昇するシナリオは想像しにくい」と述べた。
原題:Musk’s Trump Trade Makes Tesla a Winner With $570 Billion Rally(抜粋)
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