日本生命保険の清水博社長はブルームバーグとのインタビューで、海外の資産運用ビジネス拡大に向け、持ち分法適用の米運用会社TCWグループへの将来的な過半出資も視野に入れ、追加投資の機会を探っていることを明らかにした。

清水氏は「マジョリティーを持つことを選択肢」に、TCWを保有する米投資会社カーライル・グループやTCWと「話している」と述べた。ただ、「一番大事なのはTCWの成長だ」とし、カーライルなどが満足して売却できるまで、ともに協力して企業価値を高めることが前提条件になるとの認識を示した。

人口減少で国内保険事業を巡る環境が厳しさを増す中、日本生命は相次ぎ海外戦略の強化策を打ち出している。TCWについては12日に転換社債(CB)を引き受けるなど約828億円の追加投資を公表したばかり。その前日には欧米などで保険事業を展開するレゾリューションライフに対して約1兆2000億円を投じて完全子会社化する方針を発表した。

清水社長(23年7月)

TCWは米国債の運用に強みを持つが、急速に拡大する企業向けの直接融資であるプライベートクレジットなどにも投資対象を広げている。9月末時点の出資比率はカーライル約34%、日本生命約27%、TCW経営陣・従業員約39%。CBが株式に転換された場合、日本生命の比率は条件次第では10%ほど高まる。

日本生命は2035年にかけ、4兆円の成長投資を行う計画だ。海外保険で約50%、海外資産運用と国内でそれぞれ約25%などと想定している。清水氏は海外保険についてはレゾリューションの買収によって「ある程度見通しがついてきた」とし、海外運用と国内に「少し焦点が移っていく」とした。

金利ある世界

国内では日本銀行が今年3月に17年ぶりの利上げに踏み切り、10年国債は利回りが直近では1%台に上昇(価格は下落)している。こうした中で、日本生命をはじめ生保各社は資産運用ポートフォリオの改善を進めている。

清水氏は、国債などでの資金運用について、相対的により高い利回りへの入れ替えを進める考えを示した。一方、9月末時点で2兆188億円に膨らんだ国内債券の含み損については「処理の仕方に関しては経営における最重要課題の一つ」と述べた。

また、同社が保険契約者を構成員とする相互会社の形態をとっていることについて、「短期的な点にとらわれることなく長期的な成長を常に目指している」と指摘。資金調達の必要性があれば株式会社化は有効策の一つだとしながらも、その必要性はないとして、今後も相互会社形態を続けていく考えを示した。

動画:日本生命保険の清水博社長はブルームバーグとのインタビューで来年度の営業職員の賃上げ方針や、アメリカ事業拡大の意欲について話しました。

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