(ブルームバーグ):上場来高値をおよそ四半世紀ぶりに更新したソニーグループ株。投資家は有力ソフトウエアの発売を2025年に控えるゲーム事業の利益拡大に期待しており、目前に迫った新年相場入りに向け株価の先高観は強まっている。

人気の家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」シリーズを展開するソニーG株は12日、一時3479円とブルームバーグのデータでさかのぼることが可能な1974年以降の最高値(株式分割考慮)を付けた。これまでの高値は2000年3月の3390円だった。年初来上昇率は22%(19日時点)と東証株価指数(TOPIX)の15%をアウトパフォームしている。
25年はPS5向けソフトの「ゴースト・オブ・ヨウテイ」や「マーベルズ・ウルヴァリン」が発売される見込み。「ヨウテイ」の前作である「ゴースト・オブ・ツシマ」は20年の発売で、日本の鎌倉時代に起きた「元寇」がテーマの時代劇アクションアドベンチャーゲーム。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのホームページによると、コンソールとPC向けの合計販売本数は世界で1300万本を突破した。
ロンドンを拠点に、日本などアジア企業を調査するペラム・スミザーズ・アソシエイツのペラム・スミザーズ氏は「2025年はビデオゲームにとって過去最高の年になるだろう。ソニーはその大きな分け前を手にする」と予測。ゲーム関連株としてのソニーG株の値上がりは始まったばかりの可能性が高いとみている。

ソニーGの第2四半期(7-9月、2Q)営業利益が前年同期比73%増の4551億円と市場予想の3353億円を大きく上回ったのは、PS5の値上げで収益性が改善し、自社制作以外のソフト販売の増加が着よしたゲーム事業だった。
ゲーム&ネットワークサービス事業の営業利益が全体に占める割合は、前期(24年3月期)2Qの19%から今期(25年3月期)2Q時点では30%以上にまで高まっている。ソニーGでは11月、同事業の今期営業利益見通しを従来の3200億円から前期比11%増の3550億円に上方修正した。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズで日本株運用責任者を務める井上純一氏は、ソニーGの最近の成功はゲーム機からソフトウエアや知的財産(IP)へ多角化を図ったためだと分析。PSハード販売の依存度を減らすことで半導体部門の変動を乗り切り、来年の不透明な経済見通しに備えることができており、ソニーG株は理想的な買い対象と井上氏は評価する。
ブルームバーグのデータによると、井上氏が運用する「ジャパン・オポチュニティーズ・ファンド」はソニーG株を約12億7000万円保有し、10月末時点ではトヨタ自動車、日立製作所に次ぐ保有銘柄ランキングで3位だ。
ソニーGの向こう12カ月の予想株価収益率(PER)は20倍と、競合する任天堂の36倍や米マイクロソフトの35倍と比べ相対的に割安な水準にある。マッコーリー・キャピタル証券で日本株リサーチ部門の責任者を務めるダミアン・トン氏は、同水準の市場価値を持つ他の日本企業と比べても割安で、来年はさらに上昇する余地があることを示唆していると言う。

ソニーG株はTOPIX構成銘柄の時価総額でトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぐ3位。PERはトヨタやMUFGよりも高いが、4位のリクルートホールディングスや5位の日立製作所は下回っている。
マッコーリーでは今月に入り、ソニーG株の投資判断「アウトパフォーム」を継続し、目標株価を従来よりも17%高い3950円に引き上げた。自社開発のゲームソフトの業績貢献を見込んだためで、来年は世界的ゲームソフトのリリースで知名度が上がり、特に海外投資家からの保有人気が高まるとトン氏は予想する。

ジャナスの井上氏は、世界でヒットしたゲーム「エルデンリング」などのIPを保有するカドカワの買収に向け協議をしていることが明らかになった点もソニーGの魅力を高めているとの見方を示した。
もっとも、来年の株価に明るい見通しが広がるソニーGにとっても懸念材料はある。スミザーズ氏は為替市場で円高が進めば、PS5の販売に逆風が吹く可能性があると指摘。また、トランプ次期米大統領が中国に対する貿易規制を一層強めれば、中国市場の動向が同社にとってマイナス要因になり得ると警戒する。
ただ、マッコーリーのトン氏は、ソニーGが「地政学的な懸念からそれほど大きな打撃を被っていないことは現時点で際立っている」とし、「ゲームは国家安全保障の問題ではない」と語った。
--取材協力:Abhishek Vishnoi.
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