これからの時代に求められる「キャリア自律」

働く人のキャリアを決めるのは、本人であるべきか、それとも会社であるべきか。 二律背反ではないかもしれないが、近年では働く人自らがキャリアに対する主体性をもち、積極的に能力開発を進めていく「キャリア自律」という考え方が重視されるようになっている。

その背景には、雇用や職務の安定性が揺らいでいることがある。不確実性の高い現 代に企業が存続していくには、常にビジネスモデルを変革し続ける必要がある。そのため、そこで求められる職務やスキルも頻繁に変容せざるをえず、今では企業が労働 者に画一的なキャリア像を提示することが難しくなっている。ゆえに、個人が自らのキャリアを管理し、自己責任のもとで必要なスキルや専門性を自主的に開発するキャリア自律が求められるのである。

また働く人の多様化が進むなかで、キャリア自律は誰もがその人らしく働くために必要な考え方となっている。従来の企業主導のキャリア形成は画一的になりがちで、多様な人材を包括するには限界がある。出産や子育てなどライフステージに応じて働き方を変える人が増えていることに加え、家族の介護に従事する人、高齢者、持病や障害をもちながら働く人も増えている。企業は彼らを画一的なキャリアに当てはめるのではなく、一人ひとりに適したキャリア形成を支えていくことが望ましい。そのためにも、働く人自身がどのようなキャリアを歩みたいかという目標をもつことが前提となる。

自分でキャリアを考えたいという人が多い

働く人びとは自身のキャリアを主体的に形成していくことについてどのように考えているのだろうか。これからの職業生活設計を自分で考えていきたいか、もしくは会社に提示してほしいかに関する、正社員の意向についてまとめていく。

会社で提示してほしい(「会社で職業生活設計を提示してほしい」「どちらかといえば、会社で職業生活設計を提示してほしい」)と考える人は 19.4%にとどまる一方、自分で考えていきたい(「自分で職業生活設計を考えていきたい」「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」の合計)と答えた人は 66.7%に上る。正社員で働く多くの人は、主体的にキャリアを形成していくことに前向きであることがうかがえる。