中国共産党指導部は9日、2025年に金融緩和と財政支出の拡大を進める方針を示した。トランプ次期米政権の発足を来月に控え、米国との第2次貿易戦争に備える。

習近平総書記(国家主席)をトップとする中央政治局は来年の金融政策を「適度に緩和的」とすると発表。11年以来の大幅なスタンス変更となる。これまでは「穏健な」金融政策としていた。国営新華社通信によると、指導部は財政政策に関しても「より積極的な」と、従来の「積極的な」から表現を強めた。

今回の政治局会議では「不動産と株式市場を安定化させる」方針が示されたほか、共産党用語で景気押し上げを目的とした異例の手段の活用を意味する「超常規の逆周期政策調整」の強化も打ち出された。

10日の中国株式相場は上昇。本土株の指標CSI300指数は一時3.3%高となった。香港上場の中国本土企業から成るハンセン中国企業株(H株)指数も上げている。前日は3.1%高だった。

強気のセンチメントは株式市場以外にも広がり、中国国債や商品も買われた。10年債利回りは過去最低を更新した。

トランプ次期米大統領が新たな対中関税をちらつかせる中で、中国企業が対米輸出を急いだことが11月の貿易統計で示された。輸入は予想外に減少し、国内経済の低迷をあらためて示す兆候となった。

税関総署が10日発表した11月の輸出額は前年同月比6.7%増の3120億ドル(約47兆2000億円)。輸入は3.9%減った。これにより、貿易黒字は974億ドルとなった。

 

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニアストラテジスト、邢兆鵬氏は「今回の政治局会議の声明文の表現は前例がない」と指摘。強力な財政拡大や大幅利下げを示唆しているとの見方を示した。

邢氏はトランプ氏が中国からの輸入品に60%の関税を課す考えを示唆している点に触れ、「政策のトーンとしてはトランプ次期大統領による脅威への備えに強い自信を示している」とも分析した。

中国当局が9月下旬から広範な刺激策を打ち出し、景気はここ数カ月で安定化の兆しを見せている。だが、米追加関税の可能性で輸出見通しは悪化し、世界2位の経済規模を誇る中国には貿易戦争が再燃した場合のショックに対処する必要性が生じていた。

 

12月の政治局会議では通常、年間の国内総生産(GDP)成長率目標など翌年の経済運営方針を決める中央経済工作会議に向けた議題が設定される。ブルームバーグ・ニュースは、中央経済工作会議が11日から始まると先週報じた。

中国はここ数年、金融引き締めと緩和のサイクルを何度か繰り返してきたが、11年以降は「穏健な」金融政策という全般的なスタンスを堅持していた。11年当時は当局が世界金融危機の際に採用した「適度に緩和的な」スタンスからインフレ抑制に転じた。

今回の金融政策スタンス変更は、新型コロナウイルス禍後に期待されていた好景気が実現せず、中国人民銀行(中央銀行)による緩和モードの強化が急務だったことを示している。人民銀はすでに利下げに踏み切り、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率も引き下げてきたが、借り入れ拡大を促す効果は乏しかった。

ジョーンズラングラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト、龐溟氏は「追加的な政策手段では量と質、効果において大幅な改善が見込まれる」と指摘。「GDP成長率目標は5%前後に設定される可能性がかなり高まった」と述べた。

 

原題:China Signals Bolder Stimulus for Next Year as Trump Returns (2)、China Eases Monetary Policy Stance, Vows More Fiscal Support (3)(抜粋)

(貿易統計などを追加して更新します)

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