(ブルームバーグ):3メガバンクグループは、米検察当局に贈賄などの罪で起訴されたインド新興財閥アダニ・グループの創業者ゴータム・アダニ氏との関係を維持する方針だ。
みずほフィナンシャルグループは、アダニ氏を巡る今回の騒動が長期的な影響をもたらすことはないとみてアダニ・グループへの支援を継続する方針。事情に詳しい複数の関係者が述べた。
また三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三菱UFJフィナンシャル・グループも手を引く計画はなく、必要な場合に新たな融資に応じる可能性にもオープンだとしている。事情に詳しい関係者らが述べた。
3社の広報担当者は、いずれもコメントを控えた。アダニ・グループの担当者はすぐにはコメントしなかった。
今回の起訴を受けたアダニ氏への大手金融機関の対応は割れている。3メガバンクと異なり、バークレイズなど他の複数のグローバル金融機関はアダニ・グループへのエクスポージャーを見直している。
米検察当局は先週、インドの政府高官に2億5000万ドル(約380億円)強の賄賂を渡すとともに、その事実を米投資家に隠したとして、アダニ氏ら幹部を起訴した。
アダニ・グループは今回の起訴ついて、根拠がないものだとコメントしている。同グループの担当者は、借り入れ先や投資家を安心させるため会合を重ね、問題に関する同グループの姿勢を説明している。
リスク評価の高度な枠組み
アダニ・グループによる新たな資金調達の要請は当面なさそうだが、風評リスクを懸念する一部のグローバル金融機関は、同グループへのエクスポージャーを抑制している。
日本の金融機関は、同グループがキャッシュフローを生む資産の裏付けがある融資先であることから安心感を得ている。アダニ氏は政府との結び付きが強く、米国の法的措置には長い時間を要すると事情に詳しい関係者は指摘する。
ビジネススクールINSEAD(インシアード)シンガポール校のベン・チャルーンウォン准教授(ファイナンス)は、アジア金融危機後の邦銀のリスク許容度に関連し、「90年代の東南アジアでの経験から、日本の銀行は新興国市場のリスクを評価する高度な枠組みを開発した」と指摘する。
同氏は「インドを重要な成長市場と見なすMUFGやSMBCなどは、インドへのエクスポージャーを大幅に減らすことはないだろう」とした上で、一部の案件についてはプロセスを厳格化したり、リスクプレミアムを引き上げたりする可能性はあると語った。
新たな資金供給を停止
バークレイズはアダニ氏にとって長年頼れる存在だったが当面の間、アダニ・グループへの新たな資金供給を停止している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
空売り投資家でもある米調査会社ヒンデンブルグ・リサーチが昨年、アダニ・グループが不正行為を長年続けていると主張して以来、バークレイズは同グループへのエクスポージャーを縮小するようになった。
それでもバークレイズは昨年、アダニの太陽電池モジュール工場向けの3億9400万ドルのトレードファイナンスに参加した。また今年初めには、アダニ・グリーン・エナジーの債券発行を支援している。
バークレイズの広報担当者は、アダニ関連のエクスポージャーや同グループとの関係についてコメントを控えた。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループもヒンデンブルグ・リサーチの告発後、アダニ・グループを支援し続けてきた。
米検察当局の起訴を受けアダニ問題が再燃したことを受け、ジェフリーズは同グループとの新たな取引について協議していないと、事情に詳しい複数の関係者が明かした。
関係者らによると、ジェフリーズは取引を一時停止または中止するかどうか正式な決定を下しておらず、新たな取引に着手する前に告発に関して確かな情報を必要としている。
関係者らによると、ジェフリーズは一時的にアダニ関連株を保有していたが、マーケットメーカーとしての保有で同社に投資するためではなかった。ジェフリーズのインド事業に占めるアダニ・グループのシェアは4%にも満たないとも付け加えた。
ジェフリーズの広報担当者はコメントを控えている。
原題:Japan Banks Stick With Adani as Jefferies, Barclays Review Ties(抜粋)
(情報を追加して更新します)
--取材協力:浦中大我、Catherine Bosley、Chanyaporn Chanjaroen、Baiju Kalesh、Harry Wilson、Jan-Henrik Foerster.
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