29日の日本市場では円相場が対ドルで上昇し、一時149円台後半と1カ月超ぶりの円高水準に振れた。東京都区部の消費者物価指数(CPI)が生鮮食品を除くコアベースで市場予想を上回り、日本銀行の追加利上げを後押しするとの見方から円買いが強まった。株式相場は反落し、債券相場は中期債が下げた。

総務省が同日朝に発表した11月の東京都区部コアCPIは前年同月比2.2%上昇と市場予想(2%上昇)を上回った。政府補助の縮小を受けたエネルギー価格のほか、コメやチョコレートなど食料価格の上昇が大きく、3カ月ぶりに伸び率が拡大した。同データは12月下旬公表の全国CPIの先行指標的役割を担う。

SMBC日興証券の関口直人エコノミストは「来年前半までは輸入インフレの影響が残ることもあり、コアCPIは2%を上回って推移する」との見方を示した。

日銀が掲げる2%の物価目標を上回る状況が続けば、12月の利上げ確率が高まる上、来年に入っても金融政策の引き締め姿勢が続く可能性があり、株式や金融市場に大きな影響を及ぼしかねない。市場の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は12月利上げの可能性を約6割、来年1月までの可能性を約8割織り込んでいる。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時1%超上昇し、心理的節目の1ドル=150円を突破した。11月の東京都区部CPIが市場予想を上回り、日銀による追加利上げ期待の高まりから円買いが活発化した。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、東京CPIの伸びが拡大し12月利上げへの意識が高まった上、月末の実需の取引が予想以上にドル売り・円買いに傾いたと分析。さらに、米長期金利が時間外取引で低下したことなども重なり、「予想外に円高に振れている」と述べた。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは12月の日銀決定会合について、米国が利下げして150円を上回る円高になっていれば利上げが見送られるが、「米利下げ見送りで円安が進めば、行動を起こすかもしれない」との認識を示した。「日銀の政策判断は為替にらみ」だと言う。

株式

東京株式相場は反落し、日経平均の下げ幅は一時300円を超えた。東京都区部CPIの上振れで1ドル=149円台まで円高が進み、業績への影響が懸念された自動車や機械、精密機器、電機など輸出関連株中心に売られた。

インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「CPIは日銀による12月利上げの可能性をやや高めるものだと市場は評価している」と指摘し、為替の円高を通じ、輸出関連銘柄にネガティブに働いたと述べた。

一方、12月の利上げ観測を背景に銀行や保険など金融株は堅調で、東証33業種は21業種が下落、上昇は12。売買代金上位ではディスコや三菱重工業、トヨタ自動車、日産自動車が安い半面、三菱UFJフィナンシャル・グループや楽天銀行は高い。資産効率の低い不動産を売却も含め見直す方針を社長が示した東京ガスも上げた。

債券

債券相場は中期債が下落。朝方発表の11月の東京都区部CPIが予想を上回ったことで日銀の利上げ期待が高まり、売りが優勢だった。2年債入札も低調に終わった。2年債入札のテール(平均落札価格と最低落札価格の差)は2月以来の大きさ。

一方、超長期債には最近の利回り上昇を受け、投資家から値頃感からの買いが入った。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、2年債入札の結果は低調だったとした上で、東京都区部のCPIが予想外に強く、日銀による12月の「利上げを後押しする結果だったことも影響した」と分析。超長期債の上昇については「このところ40年債中心に弱かった反動だろう」との見方を示した。

関連情報:日本債券:2年利付国債の過去の入札結果(表)

新発国債利回り(午後3時時点)

--取材協力:田村康剛.

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