米銀JPモルガン・チェースでは今年7月までマルコ・コラノビッチ氏が率いてきた株式戦略チームが、ここに来て米国株に対して強気な見方に転じた。

7月に退職が明らかになったコラノビッチ氏の下、同チームは2022年終盤から弱気な見通しを維持、S&P500種株価指数の目標水準を2年弱にわたって4200に据え置いていた。S&P500種はこの水準をすでに23年に突破し、今年は6000を超えている。ウォール街では見通しの上方修正が相次いだ。

この夏に同社の市場調査を引き継いだドゥブラフコ・ラコスブハス氏は27日、年末の目標水準を6500とすると明らかにした。ブルームバーグが追跡するストラテジストらは平均で約6300を予想している。

JPモルガンの新しい予測は26日の終値からおよそ8%の上昇を意味する。ラコスブハス氏が強気見通しの根拠としたのは、健全な労働市場と、利下げ、人工知能(AI)技術でトップを競うための設備投資ブームの予想であり、このほかにも複数の追い風を見込んでいる。

「地政学的な不確実性の高まりと進化する政策アジェンダによって、見通しは異例の複雑さを見せているが、リスクをしのぐチャンスがある可能性は高い」とラコスブハス氏は27日付の顧客リポートで述べた。

S&P500種株価指数と10月16日時点でのストラテジー株予想

JPモルガンのストラテジストからはこの2年ほど、株式市場については警告が相次いでいただけに、今回の路線変更は留意に値する。チームは24年入りにあたって、景気減速によって企業利益が圧迫されるだろうと警告していた。バリュエーションから来る割高感と、ポジションの密集、ボラティリティーの低さが株式を「非常にぜい弱」にしているとも指摘していた。

実際に今年のS&P500種株価指数は年初来で約26%上昇している。2年連続で1年を20%余りの上昇で終えれば、今世紀で初めてとなる。強い経済に加え、AIの熱狂、金融緩和が株価を押し上げている。JPモルガンが強気に転じたことで、ウォール街では逆張り予想はますます少数派となった。

大手銀行やアナリストの株価予想は、向こう1年は強気が主流だ。ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の予想はS&P500種で6600近辺。ドイツ銀行とヤルデニ・リサーチは7000の高水準を予想している。

年初から11月27日までのS&P500種騰落

米国株への楽観はただ、岐路に立たされている。S&P500種の株価収益率(PER)は1年の利益予想ベースで22倍を上回る。過去10年の平均は18倍だった。トランプ次期米大統領が公約した関税や労働者の強制送還といった政策で、インフレが再燃すれば国債利回りが跳ね上がり、株式を圧迫する可能性がある。

「政策行動や大統領令のタイミングや規模、波及的な影響など、企業利益には未知の部分が依然大きい」とラコスブハス氏。そうした「混乱を引き起こす要素が極めて多い政策と、それが株式にもたらすダウンサイドのリスク」はあるものの、「トランプ氏の市場重視姿勢と、政策金利の引き下げ、中国による景気刺激の取り組みが株式相場を下支えするはずだ」と述べた。

原題:JPMorgan Drops Kolanovic Pessimism and Predicts US Stocks Rally(抜粋)

(JPモルガンの見通しについて詳細と背景を加えます)

--取材協力:Jess Menton.

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