米国で大手電力会社の二酸化炭素(CO2)排出削減目標の達成が危ぶまれている。

人工知能(AI)関連の電力需要が急増している上に、第2次トランプ政権の発足を控え、米政府が化石燃料に有利な政策に転換する可能性があるためだ。

米電力各社は野心的なCO2排出削減目標を掲げ、その多くが2050年までの「ネットゼロ」、つまり温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指している。

しかし、データセンターを中心に電力消費量が想定外に急増する中で、共和党が大統領選と連邦議会選を制した。このため、一部の電力会社は石炭火力発電所の廃止を延期するとともに、天然ガス発電所の大幅な増設を計画している。

AI革命を受け、電力会社は電力消費見通しの見直しを余儀なくされ、トランプ次期大統領は発電所による環境汚染抑制や石炭火力発電所の閉鎖を促進する一連の連邦規則を「撤廃」すると繰り返し表明している。

電力会社は10年余りに及ぶ停滞の後、突如急増している電力需要への対応を急いでいる。

各社は再生可能エネルギーを自社のシステムに追加し続けているものの、環境負荷は高いが安定的な電力供給源である発電所を閉鎖することに消極的な企業もある。

クレジットサイツのアナリスト、アンディ・デブリーズ氏は「トランプ氏は間違いなく気候変動対策の進展を遅らせる」と指摘。ただ、データセンターの電力需要は、それよりもさらに大きな影響を与えるだろうとも語った。

エネルギーコンサルティング会社ウッド・マッケンジーが今月出したリポートによると、共和党がホワイトハウスと上下両院を掌握したことで、米国のエネルギー政策は脱炭素化の目標達成から遠ざかっている。

これまで環境関連目標の先延ばしや修正を表明している企業は主に、共和党が主導する州や、大統領選の激戦州で事業を展開。バイデン大統領が掲げてきた35年までの電力システムの脱炭素化という高い目標は、ますます達成が疑問視されている。

データセンター近くにある配電所(バージニア州アッシュバーン)

原題:Trump and the AI Power Boom Put Utility Climate Goals at Risk(抜粋)

--取材協力:Anne Riley Moffat.

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