米アルファベット傘下グーグルにインターネット閲覧ソフト「クローム」の売却を命じるよう求める米司法省の提案を裁判所が受け入れた場合、同事業の価値は最大200億ドル(約3兆1000億円)に上る可能性がある。実現すれば、世界有数のテック企業に反トラスト法に基づく事業売却を求める歴史的ケースとなる。

関係者によれば、司法省の反トラスト法執行担当者は、コロンビア特別区(首都ワシントン)連邦地裁のアミト・メータ判事に対し、人工知能(AI)とスマートフォンの基本ソフト(OS)「アンドロイド」に関する措置をグーグルに求めるよう要請する方針だ。

グーグルのクローム

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、マンディープ・シン氏は、30億人以上の月間アクティブユーザーがいることを考えると、売却が実現した場合、クロームの価値は「少なくとも150億-200億ドル」相当に上ると試算した。

メータ判事は今年8月にグーグルがオンライン検索サービスと検索テキスト広告市場で反トラスト法に違反したとの判断を示した。グーグル側は判決を不服として争う構え。

非公開情報を理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、反トラスト法執行担当者と訴訟に参加した複数の州当局は20日、独占の弊害解消に向け、データライセンシング(使用許可)要件をグーグルに課す是正案もメータ判事に示す予定だ。

訴訟はトランプ政権下で提起され、バイデン政権でも継続された。判事が是正案を受け入れれば、オンライン検索市場と急成長するAI業界を一変させかねない。マイクロソフト解体に20年前に失敗した後、違法な独占が認定されたテック企業を制限する最も大掛かりな動きとなる。

世界で最も人気の高いウェブブラウザーのクロームは、多くの人々が検索エンジンを利用する際に経由する主要アクセスポイントであり、グーグルの広告事業にとって重要だ。ウェブトラフィックの解析を行うスタットカウンターによると、米市場で約61%のシェアを握る。

ログインユーザーのアクティビティーを把握し、そのデータをプロモーション対象のより効果的な絞り込みに活用するモデルが同社の収入の大部分を占める。クロームは対話型AI「ジェミニ」にユーザーを誘導する手段でもあり、ジェミニはウェブ上でユーザーをフォローするアシスタントに進化すると期待される。

関係者によれば、反トラスト法執行担当者は、グーグルにアンドロイドの売却を求めるより厳しい選択肢を取り下げた。是正措置の他の幾つかの側面がより競争的な市場につながる場合には、クロームの売却が必要かどうか米当局が後日判断することもあり得る。

司法省と各州は、クロームで得られた検索結果とデータの使用許可、グーグルのAI製品によるウェブコンテンツ使用を防ぐ追加の選択肢提供を義務化する是正案で合意に達したという。

グーグルの規制問題担当バイスプレジデント、リーアン・マルホランド氏は「このような方法で政府が有利になるよう事を運ぶことは、消費者と開発者、米国の技術的リーダーシップに対し、それがまさに最も必要とされる時に害を及ぼすことになるだろう」と反論した。

司法省はコメントを控えた。

原題:Google’s Chrome Worth Up to $20 Billion If Judge Orders Sale (1)、DOJ Will Push Google to Sell Chrome to Break Search Monopoly (2)(抜粋)

(アナリストの試算を追加して更新します)

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