トランプ次期米大統領の政権移行チームは、財務長官にケビン・ウォーシュ元連邦準備制度理事会(FRB)理事を、ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)委員長にヘッジファンドマネジャーのスコット・ベッセント氏を起用することを検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

ケビン・ウォーシュ元FRB理事

ヘッジファンド運営会社キー・スクエア・グループ創業者のベッセント氏は先週、NEC委員長および財務長官のポストについてトランプ氏と話し合った。

ウォーシュ氏は政権移行チームが拠点を置くトランプ氏のフロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」に招かれており、今後数日中に次期大統領との面接に臨むと関係者は話した。

ウォーシュ氏(54)とベッセント氏(62)は、トランプ氏が経済チームのリーダーに求めるウォール街の経歴を備えているとみられており、いずれも次期大統領に近い多くのアドバイザーの支持を得ている。

ただ、ウォーシュ氏がトランプ氏の「米国第一」の保護主義的な経済政策に忠実かどうかは疑念が残る。同氏が2011年にジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事と共同執筆した論説では、政策当局者は「経済保護主義の高まりに抵抗しなければならない」としていた。

ウォーシュ氏はトランプ政権1期目でFRB議長の最有力候補の1人だった。だが、当時のムニューシン財務長官がトランプ氏を説得し、ジェローム・パウエル氏を指名した経緯がある。トランプ氏はこの人事について、公の場で後悔の意を示していた。

トランプ氏は先週、財務長官人事を決定すると予想されていた。その後、NEC委員長や商務長官、米通商代表部(USTR)代表など、他の経済閣僚人事が続くとみられていた。しかし、ベッセント氏とキャンターフィッツジェラルドのハワード・ルトニック最高経営責任者(CEO)それぞれが自らを売り込むなど混乱が広がり次期大統領をいらだたせ、決定が遅れていると関係者は述べた。

ルトニック氏はもはや財務長官候補ではないと見なされている。決定に詳しい関係者が明らかにした。同氏の担当者はコメント要請に応じなかった。

一方、ベッセント氏は財務長官候補にとどまっている。同氏はコメントを控えた。

事情に詳しい関係者によると、アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワンCEOも財務長官候補として検討されている。ローワン氏が閣僚に就任する場合はアポロとの関係を絶つ必要があるが、それは難しいかもしれないという。

トランプ政権1期目で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたエコノミストのケビン・ハセット氏もNEC委員長候補の1人だと関係者は述べた。トランプ氏の移行チームにコメントを求めたが返答はなかった。

ウォーシュ氏もコメント要請に応じなかった。関係者によれば、ウォーシュ氏は5日の米選挙日以降、政権以降チームと過ごしており、経済政策や人事に関する決定で助言している。

米財務長官人事を巡る混迷は、世界の経済・金融に最も影響を持つポストに迅速に候補を指名するトランプ氏の能力を妨げている。また、人事を巡る意思決定の遅れと内輪もめは、次期政権の経済政策立案能力を巡る市場参加者の不安も強めている。

エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏らは18日のリポートで「投資家はトランプ次期大統領による財務長官の選定に神経をとがらせている。経済政策に関する政権内の勢力バランスや、市場に友好的な政策と非友好的政策の組み合わせへの意味合いなどにも不安を抱いている」と記した。

原題:Trump Team Weighs Pairing Warsh at Treasury, Bessent on NEC(抜粋)

(市場関係者の見方を追加して更新します。更新前の記事は原文訂正に伴い第2段落のベッセント氏とトランプ氏の議論の部分を訂正済みです)

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