株式会社東京商工リサーチが行った「2024年お花見、歓迎会・懇親会に関するアンケート調査」によると、2024年の「お花見、歓迎会・懇親会」の開催率は29.1%であった。コロナ禍前(2019年:51.8%)と比較すると22.7ポイント下回り、前年(2023年:27.9%)からは1.2ポイントの増加にとどまった。コロナ禍であった2022年は5.3%まで減少したため、当時と比較すれば大幅に増加傾向にあるものの、コロナ禍で浸透した生活様式の変化が定着し、会社や部署単位での飲み会が積極的に開催される雰囲気ではないのかもしれない。

現在、我々の多くがコロナ禍当時の制限を忘れて、家族や友達と食事をしたり、飲み会を楽しんでいるわけだが、なぜ会社での飲み会開催の水準は、コロナ禍前ほど回復しないのだろうか。前述した通り、コロナ禍に開催されなかったことで惰性的に開催が見送られているという見方もできるだろうが、そもそも若者に限らず、それ以前の世代においても会社での飲み会に対して否定的な意見をもっている層が少なくないということが大きな要因であろう。

株式会社R&Gが行った「職場の飲み会に関する意識調査」によれば「気を遣うから」「仕事とプライベートを分けたい」「話がつまらない・合わない」などを理由に、73.6%が職場の飲み会は行きたくないと回答している。一方で、気を遣っておもしろくない飲み会にお金や時間をかけるのは無駄と感じつつも、飲み会に参加しない事で生じる負の影響(出世に影響する・上司に嫌われる)などを考慮して、しぶしぶ参加しているのが実態であろう。株式会社識学の調査では、職場での飲み会参加について「強制参加」が5.3%、「任意だが強制に近い」が36.3%と、“参加せざるを得ない空気”がある企業があるのも実情だ。

コロナ過での生活様式が浸透したことで、就業後のプライベートの時間を大切にしたり、在宅勤務が可能になり、子育てと両立しやすくなったりと、時間を自身の“ために”充てることができるようになり、益々仕事とプライベートの境目が明確になっていく中で、わざわざ仕事の後に顔を合わせるのではなく、昼休憩を活用してランチ会などを開きコミュニケーションをとる職場も増えてきている。昼休憩中ではあるものの、就業時間内で済むという点や、お酒を強要されることがない点、参加者が節度を持っている点、飲み会に比べて費用が掛からないという点、スケジュールの調整が飲み会を開催するよりかは融通が利く点などが好まれている理由だ。

また、若者に限らず、飲み会がなくても特段不都合がなかったという経験をしてしまったため、わざわざそれを復活させる必要はないと考えるのが、飲み会に対して消極的な層の本音だろう。もし、満足いく給与をもらえていなかったり、やりがいのある(やりたい)仕事でなければ、ほとんどの消費者にとって、労働は消費(生活)するために、やりたくないけれどもしなくてはいけない事というネガティブな対象であるだろうし、それに対して自分の時間やお金を削るくらいなら、その嫌な労働をするためのモチベーションとなり、自身を満たすようなことにリソース(時間やお金)を割くのが合理的だろう。それ故に会社での人間関係は淡白なモノとなっていく。