3|雇用管理制度
(1) 採用
採用は、企業が事業の成長や競争力強化のために、必要な人材を確保するプロセスである。ジョブ型人事制度のもとでは、職務内容や役割に応じて人材を募集し、即戦力となる専門性を持った人材をターゲットとする。これにより、従来の年功序列や新卒一括採用に頼らず、企業のニーズに即した柔軟な採用が可能となる。
▼共通する取り組み
1) 経験者採用の拡充
中外製薬やKDDI等では、経験者採用を大幅に拡大し、即戦力となる専門職の採用が増加し、近年は新卒採用よりも経験者採用が多くなっている。さらには、レゾナック・ホールディングスのようにCxOや組織長も外部から調達しているケースもある。
2) 新卒採用の早期配属確約
アフラックでは、新卒社員の一部に初期配属先を確約することで、早期に社員がキャリア志向に沿った職務に従事できる体制を整えている。
▼独自性のある取り組み
1) ジョブマッチング型のインターンシップ
富士通では、ジョブ型人事に対応した、有償の「ジョブ型インターンシップ」を実施しており、学生のジョブに対する理解促進と、具体的なキャリア形成を支援している。
2) 採用ルートの多様化
日立製作所では、経験者採用の専任チームを大幅に拡充し、リファラル採用、グループ内公募、アルムナイ採用等、採用手法の多様化に取り組んでいる。
▼まとめ
・経験者採用が新卒採用を上回るケースもあり、ジョブ型を通じ即戦力となる人材の獲得が進んでいる。
・新卒採用において職種別採用を実施し、採用時点で職掌を特定することで、配属後のミスマッチを防止する。
・外部市場からの人材登用を積極的に行い、特に専門職やCxOクラスのポジションにおいて、外部人材を重用しているケースがある。
(2) 人事異動
ジョブ型人事制度を導入した企業では、社員が自律的にキャリアを形成できるような異動制度が拡充されている。ポスティング制度や社内公募制度を活用することで、社員が自らの意思でキャリアを切り開ける環境が整備されている。
▼共通する取り組み
1) 社内公募制度の拡充
多くの企業で、社員が自らの手を挙げて異動を希望できる仕組みが整っている。これにより、社員は自らのキャリア形成を進め、新たな挑戦に取り組むことが可能になっている。富士通、日立製作所、三菱マテリアル等で導入されており、この制度を通じて、社員のキャリア自律を促進し、新たな挑戦や成長機会を提供する。また、テルモ等は管理職の昇進にあたっても公募している。
2) 社員の自律的なキャリア形成の支援
多くの企業で、社員が異動に際して自己成長を促進できるよう、キャリア相談や1on1ミーティングを活用している。富士通やソニーグループ、三井化学等では、社員の希望や成長目標を考慮した上での異動が進められている。
▼独自性のある取り組み
1) 会社主導と社員希望のバランス
アフラック生命保険や資生堂等では、会社主導のジョブローテーションと社員の希望に基づく異動のバランスを取る方針が強調されている。特にアフラック生命保険では、全国の拠点における人員配置や危機管理を考慮したローテーションが実施されている。
2) 社員主導の異動
ソニーグループでは社員本人の希望に応じて異動ができるカルチャーであり、会社主導での異なる職種への異動はあまり行われず、その場合も本人の同意を得ることが基本で強制はしない運用となっている。
3) タレントマネジメントシステムの活用
ENEOSでは社員の評価、経歴、保有資格等の情報はタレントマネジメントシステムに蓄積され、人材配置にあたってはこれらの情報をもとに、最適な人材を成長分野や重要ポジションに投入している。
▼まとめ
・社内公募制度が活発に運用されており、社員が積極的に異動を希望し、キャリア形成を進める機会が増加している。
・管理職の昇進にあたっても社内公募制度を活用することで、社員のキャリア形成を促進している。このような制度により、社員は自発的にキャリアを切り開く意欲が高まり、企業のエンゲージメントが向上する。
・タレントマネジメントシステムを活用し、社員のスキルや評価情報をもとに最適なポジションに人材を配置しているケースもある。これにより、成長分野や重要ポジションに適切な人材が投入され、企業の競争力が強化されている。