健康寿命は、大まかに言えば、各年齢の生存者数とその年齢における健康な人の割合で算出される。3年おきに算出されており、2019年までは、寿命の延伸と健康状態の改善に支えられて、男女とも延伸し続けてきた。しかし、厚生労働省によると、2022年の寿命は、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」とする。)の影響などによって2019年と比べて短縮した。健康寿命は、コロナ禍を経てどうなったのだろうか。

本稿では65歳時点の余命・健康余命について、2022年の状況を紹介する*1。

*1 本稿における「健康寿命・余命」は、国が公表する健康寿命の定義である「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とし、「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問の結果を用いて算出する。

65歳時点の健康余命は、男性で短縮、女性で微増

「2022年簡易生命表」と、「2022年国民生活基礎調査」の結果を使って、2019年までの算出方法に倣って筆者が計算したところ、65歳時点の健康余命は、男性が14.35年、女性が16.86年だった*2[図表]。この3年間で男性は0.08年短縮し、女性は0.15年の延伸に留まった。詳細は割愛するが*3、健康状態は男女とも高齢期を中心に2019年と比べて改善していたことから、65歳時点の健康余命の伸び悩みは、新型コロナ等によって余命が短縮した影響が大きいと考えられる。

この3年間で、65歳時点の余命は男性が0.39年、女性が0.33年短縮しており、平均余命と健康余命の差、すなわち不健康期間は男性が5.09年、女性が7.45年と、男女とも過去最短となった。

*2 厚生労働科学研究「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」のロジックを使って計算をした。
*3 詳細は、村松容子「2022年データによる65歳時点の健康余命」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター(2024年8月5日)をご参照ください。