(ブルームバーグ):米大統領選の共和党候補トランプ前大統領とその支援者たちは、選挙に不正がない限り自分たちが圧勝するのは確実だと支持者らに語っている。
これは、トランプ氏敗北の結果になった場合、支持者らの怒りと法的措置を通じた抵抗を生む可能性がある。
トランプ氏の主張は、期日前投票が始まって以来、集会での演説でさらに激しさを増している。
世論調査と期日前投票のデータを混同することで、トランプ氏は自分が明確にリードしており、不正さえなければハリス副大統領に圧勝するという印象を自身の熱烈な支持者たちに植え付ける形となっている。
また、ペンシルベニア州での投票不正に関する主張を増幅させることで、選挙プロセスの正当性にも疑念の種をまいている。
トランプ氏は10月31日にニューメキシコ州で開いた集会で、「われわれは全ての世論調査で大きくリードしている」と述べ、28日にジョージア州アトランタで行われた集会での主張を繰り返した。アトランタでは、支持者たちに「不正工作が不可能なほど」の投票を行うよう呼びかけていた。
30日にはノースカロライナ州で集会を開き、2016年や20年の選挙戦よりも今の方が熱狂的な支持を受けていると述べ、「接戦だなんて信じられない」と語った。
実際には、ほとんどの世論調査で両候補はほぼ互角であり、一部のモデルでトランプ氏がわずかに優勢という結果が出ているだけだ。
選挙不正は極めてまれであり、選挙結果を覆すことにはならない。しかし、トランプ氏の過度に楽観的な予測や選挙制度についての警告は、ハリス氏が勝利した場合に結果を巡って争いが起こる素地(そじ)をつくっている。
トランプ氏は、今回の選挙の結果を受け入れるかどうかを無条件で断言することを繰り返し拒否しており、今でも20年の選挙で敗北したことを否定することも多い。同氏は選挙結果を覆そうとしたとされる事件で、連邦レベルとジョージア州で刑事訴追に直面している。
クック・ポリティカル・リポートの創業者チャーリー・クック氏は「接戦のレースに最有力候補は存在しない」と述べ、「世論調査は、基本的に同率である場合にどちらが優位かを正確に特定できるほど精密なものではない。全ての激戦州は誤差の範囲内にある」と指摘した。
マスク氏
ハリス陣営の上層部は31日、記者団との電話会見で、接戦を勝ち抜く可能性に良い感触を抱いていると述べた上で、トランプ氏の主張は敗北を心配しているサインだと指摘した。
政治指導者は、支持者らを結集させるため楽観的な勝利予測を発表するのが慣例だ。「間違いなく、われわれは勝利する」とハリス氏は30日にノースカロライナ州の集会で述べた。
しかし、トランプ氏はさらに踏み込み、データに関する過剰な期待をあおり、実際には存在しない世論調査でのリードを祝い、支援者たちも同氏に追随して強気を貫いている。
トランプ氏の最も熱心な支持者の1人であるオハイオ州選出のジョーダン下院議員(共和)は「トランプ氏は勝つだろう。全国的な世論調査でも、激戦州でも、そして期日前投票でも、トランプ氏にとってポジティブなデータばかりだ」と語る。
選挙の公正さについて自信があるかと尋ねられたジョーダン氏は、「トランプ氏が勝利することを確信している」と答えた。
トランプ氏が圧倒的な支持を得ているという認識の一部は、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏によってつくり上げられた。
同氏は自身がオーナーのソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」上で共和党のメッセージを拡散し、民主党や主流メディアの投稿を見えにくくしているとの非難を招いている。
トランプ氏支持を公言し大口献金者でもあるマスク氏は、激戦州の一つペンシルベニア州でトランプ氏の「圧勝に向けたトレンドが推移している」と投稿。バージニア州について民主党がパニックに陥っていると主張するとともに、ニュージャージー州での期日前投票の状況を大きく取り上げた。ただ現実には、両州とも民主党が確実に勝つとみられている。
オンラインの賭け市場は、主流の世論調査やアナリスト予想よりも高いトランプ氏勝利の確率を示し、同氏優位の認識をあおっている。
過激発言
一方、トランプ氏はペンシルベニア州で起こっているような、投票プロセスの正当性に疑いを生じさせる問題をことごとく利用している。
共和党全国委員会(RNC)のワトリー委員長が29日発表したところによると、トランプ陣営は、ペンシルベニア州バックス郡で郵便投票を申請しようと列に並んでいた有権者が、投票用紙を受け取らないまま「警備員に追い返された」として、訴えを起こしている。
バックス郡当局はソーシャルメディアへの投稿で、「コミュニケーション上の行き違い」の後、これらの有権者がその後、郵便投票の機会を与えられたと説明している。
トランプ氏は30日、詳細に触れずにさらに主張を強め「ペンシルベニア州は不正を行い、これまでほとんど見られなかったような大規模なレベルで、不正行為が発覚している」と投稿した。
データが曖昧で変化が激しいにもかかわらず、期日前投票の動向もトランプ氏が支持者たちを説得する材料になっている。同氏が期日前投票の情勢を誇らしげに語り、集会の聴衆に「もう投票したか」と尋ねると、何十人もの聴衆が歓声を上げて手を挙げる。
ハリス陣営はこれに関して、浮動層が大挙してトランプ氏支持に回っているのではなく、同氏の熱狂的支持者が期日前投票を行っているだけだと解説している。
トランプ氏の強引な姿勢が勝利のチャンスを自ら台無しにしかねないと警告する声もある。
共和党の指名争いでトランプ氏に敗れたニッキー・ヘイリー元国連大使は今週、FOXニュースに「誰に話しかけているのかを第一に考える必要がある」と述べた。
最近の過激な発言の幾つかは、説得できるかもしれない女性有権者を特に遠ざける危険性があると指摘。過激発言は「トランプ氏のスタイルを懸念する人々を味方につける方法ではない」と語った。
原題:Trump Insists He’s Clear Frontrunner, Sowing Doubts on Vote (2)(抜粋)
--取材協力:Zoe Tillman.
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