米労働省労働統計局(BLS)は11月1日、10月の雇用統計を発表する。ハリケーン「ヘリーン」「ミルトン」の襲来に伴う洪水や停電で多くの事業運営に支障が生じたことなどで、非農業部門雇用者数への影響が想定される。

さらに同省によれば、調査対象期間中の10月12日時点で、ボーイングの従業員を中心に計4万4000人がストライキ中だった。米金融当局は11月6、7両日に連邦公開市場委員会(FOMC)会合を開き、0.25ポイントの追加利下げを決めると見込まれているが、データの評価は困難なものになりそうだ。

ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査では、10月の非農業部門雇用者数は中央値で前月比11万人増と予想されている。9月(25万4000人増)の半分未満の数字だ。予想レンジは1万人減から18万人増と広範囲に及ぶ。

このようにいつもと違う注意が必要な雇用統計だが、11月5日に投開票が行われる米大統領・議会選を前に有権者がどのように解釈するかは不明だ。ただ、共和党候補のトランプ前大統領はバイデン政権の経済運営を巡って民主党候補のハリス副大統領を批判しており、統計がさえない内容となれば、新たな攻撃材料とする可能性がある。

インフレ率はおおむね当局目標に向けて鈍化傾向にあり、当局者は徐々に冷え込みつつある労働市場に一段と重点を置くようになっている。

政策金利は現時点で景気抑制的な水準にあると広く見なされており、当局者はデータを冷静に受け止めた上で、引き続き利下げにフォーカスすると、ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は話す。

ザンディ氏は金融当局者について、「彼らが市場に表明してきた利下げを実行しないことに対しては極めて高いハードルがある」とし、「雇用統計やインフレ統計でよほどのサプライズがなければコースを外れることはないだろう」との見方を示した。

ウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事は今月14日、10月の雇用統計を「解析するのは容易でないだろう」としつつも、ハリケーンとボーイングのストの影響で雇用者数の伸びが10万人余り押し下げられる可能性があると述べていた。

雇用統計のうち、非農業部門雇用者数は事業所調査に基づくのに対し、失業率は家計調査に基づいており、異なる基準を用いている。ブルームバーグが調査したエコノミストは10月の失業率を中央値で前月と同じ4.1%と予想している。

ハリケーン被害は労働市場に影響を及ぼしただけでなく、10-12月(第4四半期)の初めに当たり景気全体の抑制要因となった可能性がある。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、ロニー・ウォーカー氏は、自然災害のあった月とその次の月に通常経済成長が冷え込んだ後、回復に向かうと指摘した。

ウォーカー氏は、ヘリーンがハリケーンとして05年の「カトリーナ」以来最も深刻な被害をもたらし、「米人口の約10%が大規模災害宣言下に置かれ、極めて不確実性が高いものの物的損害は全体で推計900億ドル(約13兆7900億円)前後に上る」と話した。

原題:Fed’s Last Look at Job Market Will Be Muddied by Storms, Strike(抜粋)

--取材協力:Chris Middleton.

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