中国の地方債市場の不透明な一角でデフォルト(債務不履行)が急増し、過去最悪を記録している。政府による暗黙の保証を想定して購入した投資家が巻き込まれている。

もっとも、こうした事態は想定されていなかった。昨年には、地方政府の資金調達事業体(LGFV)が発行した債券で不良債権化が相次いだことで中央政府が対策を講じた。中央政府は地方政府に対し、債権者への返済支援で約2兆2000億元(約47兆円)規模の新発債発行を認め、国有銀行に追加の借り換え支援を命じた。

これを受け、借り入れコストは過去最低水準に低下。投資家は再び市場に殺到し、債券・ローンを積極的に取得した。だが、非標準債務と呼ばれ、市場で取引されない債券の問題は解決せず、デフォルトが過去最悪の水準に達した。

この分野の規模に関する公式統計はないが、アナリストの推計によると、約8000億ドル(約121兆円)。データを提供する企業預警通の集計データによると、LGFVに関連し、1-9月期にデフォルトに陥ったか返済リスクを警告した非標準債務は前年同期比20%増の60と、まだ比較的少ないものの増えつつあり、2019年にさかのぼるデータで最多となった。

中国の地方自治体は道路や港湾などインフラ事業向けの資金を調達する際にLGFVを利用する。ただこうした事業は必ずしも利益を生むわけではなく、自治体政府の支援に依存する。

LGFV発行でも市場で取引される債券は大きく事情が異なる。地方自治体は、機関投資家に人気のこれら証券を優先に据え、デフォルトは一度も生じていない。非標準債務は通常、私募で投資家に販売されるため、自治体は投資家を支援するインセンティブが低めだ。

S&Pグローバル・レーティングの李春燕マネジングディレクターは「中国はLGFV債務への対処で一連の措置を導入してきたが、市場で取引されるLGFV債は資本市場の一部であり、そうした施策によって返済は確保されなければならない」とし、「もしデフォルトに陥れば、金融と社会の安定性を危険にさらすことになろう」と警告した。

原題:Record Defaults Hit $800 Billion Chinese Local Debt Market (1)(抜粋)

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