(ブルームバーグ):21日の日本市場では株式が小幅下落。銀行や保険など金融株のほか、電気・ガスや食料品などディフェンシブセクターに売りが先行した。一方、衆議院選挙が週末に迫り、米国の大統領選挙も近づく中、明確な方向感が出にくく、主要株価指数は狭いレンジで推移した。
円相場は1ドル=149円台半ば。先週8月以来の150円台に下落したものの定着せず、利益確定の動きから一時149円ちょうど付近まで買われた後、伸び悩んだ。債券相場は中長期債が上昇(金利は低下)。
日米の政治イベントが近づき、市場では様子見ムードが広がりつつある。21日付の朝日新聞朝刊は、27日投開票の衆院選で自民、公明両党の与党が過半数を維持できるか微妙な情勢だと報じた。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストはリポートで、自公で過半数割れとなった場合、「金融市場の影響は複雑となり得る」と指摘。他の政党との連立協議の過程で「財政・金融政策面でハト派色が強まり得る」一方、政権交代リスクが意識されれば、政治不安定化への懸念が株安・円高圧力を強めることも想定されると記した。
株式
東京株式相場は小幅下落。米大統領選で共和党・トランプ候補の優位観測による米景気期待などから輸出関連株の一角や海運株が買われ、日経平均株価は一時プラス圏に浮上したが、上昇を維持できなかった。
TOPIX下落に最も寄与したのが三菱UFJフィナンシャル・グループで、1.9%の値下がり。指数構成銘柄2127のうち、1089銘柄が下落し、933銘柄が上昇した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、日米のビッグイベント待ちで、今週は方向感が出ないのではないかと指摘。米国の大手IT(情報技術)企業の決算が本格化するのは来週で、「個別で見てもマクロで見ても様子見が強まりやすく、今日の日経平均の動きはそれを象徴している」と述べた。

為替
円相場は1ドル=149円ちょうど付近まで買われた後、上げを解消。日米の政治イベントを前に利益確定のドル売り・円買いが先行した後、個人投資家のドル買いが入ったという。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、先週に150円台を維持できなかったことや短期的に手掛かりに乏しいことから、ここまでのドル高・円安に対して「利益確定の動きは続きやすい」と指摘。もっとも好調な米経済指標やタカ派色の強い米金融当局者の発言を背景に、149円割れではドル買い需要が強まりそうと語った。
ドイツ証券外国為替営業部の小川和宏ディレクターは、「円高・ドル安が進んだところでは個人投資家などのドル買いが円の重しになった」と説明。その上で、米大統領選を来月初めに控えて相場の取引自体は「抑制的」だとし、流動性の薄さを指摘した。

債券
債券相場は中長期債が上昇。先週末に売られた反動で買われた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、中長期債が買われる一方で、先週強かった超長期債は売られており、いずれも需給に伴う振れにとどまっていると指摘。「様子見姿勢が強く、週末の衆院選までは明確な方向感が出にくい」と話した。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、与党過半数割れなら政局が不安定化するため「日本売りという形で株安、円安となり、安全資産である債券は買われる可能性もある」と語る。ただ、その場合は財政拡張の可能性も高まるため、「大きく金利が下がることもイメージしにくい」とし、いずれにしても選挙結果が出るまでは動きにくいと続けた。
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