株価が好調に推移していた小売株に暗雲が漂い始めた。決算発表を経て個人消費の弱さが浮き彫りになり、上値を買い進みにくい銘柄が増えている。

イオンとセブン&アイ・ホールディングスは10月に入り、いずれも市場予想を下回る上期決算を発表。7&iHDはコンビニエンスストアの売り上げ減などを背景に今期の営業利益見通しを引き下げた。両社の株価は決算発表後に4%超安くなり、下落率は東証株価指数(TOPIX)を上回る。TOPIXの33業種で過去3カ月の上昇率がトップの小売業指数も、この1カ月で見ると21位にとどまり失速が際立つ。

8月の実質賃金は3カ月ぶりに減少に転じ、家計の消費支出は減少が続く。一方、全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は4カ月連続で伸びが加速した後、9月は補助金の復活でエネルギー価格が鈍化し、伸びは縮小した。日本銀行はCPIが想定通りに推移すれば、さらなる利上げを行うことを示唆しているが、物価高が賃上げ、消費増加の好循環につながっていない。

SMBC信託銀行の山口真弘シニアマーケットアナリストは、「今のところインフレが消費にネガティブな影響を与えている」と指摘。「消費関連株はまだ完全に追い風に乗れていない」との見方を示した。

バリュエーション(株価評価尺度)を見ると、消費の伸び悩みが株価に織り込み切れていない。TOPIX小売業指数の予想株価収益率(PER)は約24倍と、過去10年の中央値22倍を上回っており、株価の調整余地はありそうだ。

一方で、セクター全体の雲行きが怪しくなる中でも、カジュアル衣料品チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングや、低価格の眼鏡店を展開するジンズホールディングスは直近1カ月で株価が2割以上上昇した。

スイスのプライベートバンク、ユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)でファンドマネジャーを務めるズヘール・カーン氏は、「最大の懸念は、このセクターが勝者と敗者に分かれそうだということだ」と話す。「製品やサービスを差別化して値上げをし、事業を効率的に管理して賃金上昇分を補える企業が勝者になる」とみる。

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