専門家へ経済のぶっちゃけ話を聞く番組「経済の話で困った時にみるやつ」。“世界同時不況”がささやかれる中、世界経済の先行きや、今後のNISAはどうすればいいのかなどについて専門家に聞きます。

◆出演◆
末廣 徹(大和証券チーフエコノミスト)
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所上席研究員)
赤荻 歩(TBSアナウンサー)

(以下、「経済の話で困ったときにみるやつ」#10の配信より一部抜粋)

■アメリカは自国のインフレ鎮静化が最優先 9月のFOMC議事要旨 

赤荻 歩アナウンサー
FRBが9月のFOMCの議事要旨を公開し、多くの参加者が「金融引き締めが甘すぎるのと厳しすぎるのでは前者のほうが代償が大きい」と強調。追加の利上げに強い意志を示していたことがわかりましたが、どのように受け止めましたか?


大和証券チーフエコノミスト 末廣 徹さん
まだまだアメリカは自国のインフレを鎮静化させるのが最優先ということ。英国や新興国で通貨危機が発生するリスクには注意が必要な時間帯が続きそう。

ニッセイ基礎研究所上席研究員 井出 真吾さん
アメリカが経済を犠牲にしてもインフレ抑制を優先する姿勢が改めて協調された。早くインフレを落ち着かせないと、人々のインフレ予想が高まり、制御できなくなる点を心配している。また、FOMCメンバー全員が「今後の物価は上振れるリスクの方が高い」と表明した。

景気・雇用をどこまで犠牲にする覚悟かだが、失業率が予想よりかなり高くなる可能性があることを認めたうえで、多くの参加者が「労働市場が減速しても、金融引き締め方針を維持する」ことの重要性を強調した。

11月のFOMCで0.75%の利上げは確実視されている。さらに、12月のFOMCで来年末の金利見通し(現在4.6%)を引き上げる可能性が出てきた。ただ、金融市場は概ね織り込んでいたので大きなサプライズにはならずに済んだ。

■「トリプル安」に苦しむイギリスは"ドル高の被害者"か


赤荻 歩アナウンサー
イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行が9月22日に国債の売却(利上げ)すると発表しました。23日には、トラス政権が景気後退を避けるため所得税率引き下げや法人税増税の凍結など450億ドル(約7兆円)もの大規模な減税策を発表しました。

巨額の財政支出に対し、市場では英国の財政が悪化するとの見方から「通貨、国債、株式」を売る「トリプル安」と呼ばれる動きが加速し、28日には、英国債を緊急購入すると発表しました。1週間もたたないうちに中央銀行が政策変更をすることになりました。

大和証券チーフエコノミスト 末廣 徹さん
英国の新政権がインフレにも関わらず財政政策を拡充した結果、英国のインフレ懸念が高まり、英ポンドが暴落した。物価が高騰するということは、通貨の価値が下がるということなので、市場の反応は、素直な反応。通貨が下がると、輸入品の価格が上がるので、さらにインフレ率が上がるというスパイラルも予想され、パニック状態になった。さらに、通貨安を止めるために英中銀が大幅な利上げを行うとの観測から国債も暴落。2-3日で金利が1%程、動いた

ーー英国政府が財政政策を撤回しないと落ち着かないのでしょうか?

大和証券チーフエコノミスト 末廣 徹さん
英政府は一部の減税策を撤回しましたが、まだ維持しています。根本的にはそこが重要。ただし、そもそも英ポンドが下落したきっかけは米国の利上げによるドル高。奇しくも、前回の放送で「米国は自国のインフレを抑制するためにドル高を進めたい。だから利上げを急いでいる面がある」と半分陰謀論みたいな話をしたが、英国はその被害者になってしまった面がある。潤沢な外貨準備で為替介入を始めた日本円よりも英ポンドの方が「売りやすい」と、投機筋には見えた面もあるかと。