疑似的トランプ相場で円高に…ただし「隙あらば円安」
現在、一時の「止まらない円安」は和らいでいます。この円高進行は様々な要因が考えられるとしつつ、末廣さんが着目するのは「疑似的なトランプ相場で明らかになったこと」です。
7月14日にドナルド・トランプ米前大統領が襲撃された翌週、金融市場はトランプ氏の大統領復帰の可能性が高まったとの見方で「トランプ一色」の動きとなりました。ただ、末廣さんはここで米国債などの長期金利が上がらなかった点を強調します。
「かつての“トランプ相場”の一番大きい特徴が長期金利上昇でした」
なぜ今回は長期金利が反応しなかったのでしょうか。2017年のトランプ政権時は米長期金利が1%台だったのに対し今はおよそ4%台で上昇余地が少ないことがある、といいます。
疑似的なトランプ相場が生じる中で、「仮にトランプ氏が再選されても金利が上がらないので(米債券を買うための)ドルを持っててもしょうがない」という観測が広がり、スパイラル的に円の買い戻し起きた、という分析です。
その上で、過去には買い戻しの動きが生じると大体15円ぐらいの幅が出ることが多いことから、1ドル160円程度まで到達した円安は145円台まで戻ると末廣さんはにらみます。
一方、慢性的な貿易赤字など日本経済の構造に起因する「弱い円」という状況は変わっておらず、「“隙あらば円安”という動きはありそう」という留保も付け加えました。
今後も為替や利上げに関する動きで、日本経済の地力が試される局面が続きそうです。
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<取材協力>
大和証券エクイティ調査部チーフエコノミスト 末廣徹[すえひろ・とおる]