日本銀行が9日午後に開催した債券市場参加者会合では、メガバンク3行と複数の証券会社が、日銀に国債買い入れの積極的な減額を求めた。複数の関係者への取材で分かった。

  関係者によると、銀行との会合で、三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3行のうち、1行が早い段階で大きく一気に減額すべきだと発言。別の1行は最終的に月間1兆円への減額を主張し、もう1行は3兆円に減額すべきだと述べた。地銀からはより慎重な姿勢が示されたという。メガ3行の広報担当者はいずれも、コメントを差し控えると回答した。

  また、証券会社などとの会合では、複数の社が8月に即時に3兆円に減額した上で1年間継続するよう要望したほか、1年をかけて徐々に3兆円に減らすことを求めた社も複数あったという。日銀は現在6兆円程度を毎月買い入れている。

   日銀は6月に国債購入の減額方針を決定。市場の意見は30、31日の金融政策決定会合で決める「今後1-2年程度の具体的な減額計画」を議論する上で重要な材料となる。きょうの会合では減額の幅やペースに関する日銀の情報発信や参加者の意見が注目を集めていた。日銀は具体的な減額計画を提示しなかったが、参加者からは積極的な姿勢が示された形だ。

  

  日銀は会合を開催した経緯やヒアリングで寄せられた意見などについて説明した上で、参加者の意見を聞いた。日銀からは金融市場局長や市場調節課長らが出席。10日には機関投資家からも意見を聞く。会合の議事要旨を作成する予定だが、公表日は未定という。通常はおおむね3週間後に公表されている。

  植田和男総裁は6月会合後の記者会見で、「減額する以上、 相応な規模になる」との見解を表明。ブルームバーグがその後実施したエコノミスト調査では、まず5兆円程度に減額し、半年ごとに段階的に縮小して、2年後に3兆円程度まで圧縮する姿が中心的な見方となった。それ以上の減額となれば、市場にインパクトを与える可能性がある。

  ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は、債券市場参加者会合の焦点は「買い入れ額を見極めるためにマーケットがどれくらいの国債発行分をカバーできるかをヒアリングし、懸念点を解消することにある」と指摘。各社にどれくらいの年限でいくら買えるかを質問するとみており、「重要な2日間になる」と述べた。

  鈴木俊一財務相は9日午前の閣議後会見で、債券市場参加者会合に関する記者からの質問に対し、協議の場について具体的に説明を受けている訳ではないとした上で、「ある意味、重要な協議」であり、その行方を「注意深く見ていきたい」と語った。特に財務省側から要望することはないとも述べた。

追加利上げ

  日銀の減額方針を踏まえて、財務省は国債の発行年限を短期化することで、日銀に代わる買い手となり得る銀行が保有しやすい環境を整えるなどの対応に動き出した。国庫短期証券を除く日銀の国債保有割合が過半を超える中、日銀の購入減は市場に大きな影響を与え得る要素になっており、植田総裁は減額に際して「市場参加者の意見等も伺って、丁寧に進めたい」としている。

  次回の決定会合を巡っては、今月初めに38年ぶりの水準となる1ドル=162円台寸前まで進んだ円安による物価の上振れリスクなどを背景に、国債買い入れの減額計画と同時に追加利上げを決めるとの見方も市場に浮上している。

  大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは8日付リポートで、債券市場参加者会合に関して「日銀からある程度の目線を提供することが期待される」と指摘。その上で、金融政策運営について「市場が減額内容を十分に織り込めば、追加利上げの検討を俎上(そじょう)に載せやすいだろう」とみている。

--取材協力:梅川崇、藤岡徹、浦中大我.

(会合に関する関係者情報を追加して更新しました)

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