長男の片言…上がるの手伝ってください!

戦後間もない1948年に成立し、1996年まで48年間存続した「優生保護法」。障害者は障害者を産むという医学的に誤った考えと差別的な優生思想に基づき、知的障害者などに対して強制的な不妊手術を認めていました。

去年まとめられた国会の報告書によりますと、旧優生保護法下での不妊手術は全国で2万4993件。このうち65%が本人の同意がなく行われていました。最年少は9歳で、他の病気と偽って不妊手術を受けさせた事例も確認されました。

河上千鶴子さん「腹が立って、障害者にも子どもを産む権利はあるのに」

千鶴子さんのような「脳性まひ」の障害者は対象ではありませんでしたが、優生保護法がもっていた差別的な思想は法律の枠を超え、障害のある人たちの「産む権利」を脅かしてきました。

こうした優生思想に抗いながら、千鶴子さんは29歳の時に長男を出産。ヘルパー、ボランティアの助けを借りながら子育てをしてきました。

長男が1歳を過ぎた頃、こんなことがあったといいます。

車いすに乗って、長男を膝の上にのせて抱っこをして外出した千鶴子さん。駅の階段の前で、まだ1歳の長男が、片言で「上がるのを手伝ってください」と一生懸命に言ったそうです。

千鶴子さんは驚いたと同時に、とてもうれしかったといいます。今のように駅にエレベーターがなかった時代、1歳の長男は、いつも母が介助を求めて叫んでいた千鶴子さんの真似をしたようです。