まつ江さんの教えを胸に伝統の染色技法を守る

しかし、工房にはこれまでともに歩んできた母、まつ江さんの姿はありませんでした。

千葉正一さん:
「(母は)ここで座っていた。やっぱりいる人が居ないと寂しい。特にここ工房の中は。いい色だねと見ていると思う」

実は、まつ江さん、浸し染め作業を目前に控えていた5月25日、老衰のため亡くなりました。94歳でした。

千葉正一さん:
「今年の2月ごろまでは普通にしていた。(体調が)急に悪くなった。とにかく優しい親だった」

千葉さんは、先代の母親らと同じように工房近くを流れる「二迫川」の清流でていねいに水洗いし、独特の深みある色に染め上げます。

今年は、藍の発酵などが順調に進んでいることから、6月末までに着物や浴衣などに使われる反物を例年とほぼ同じ15反ほど染め上げることにしています。

4代目 千葉正一さん(73):
「教えられたことはきちんと守らないとこのような色は出ない。この技を教えてくれたのはおふくろ。1から10まで染め上がるまで種まきからそれはすごく感謝している」

『母が染める色に少しでも早く近づきたい』と語る千葉さん。亡くなった母、まつ江さんの思いを胸にこれからも伝統の染色技法を守り続けます。

母親のまつ江さんは18歳で千葉家に嫁ぎ、義理の祖母と義理の母から藍染を学ぶ。2010年に県の無形文化財指定されました。2017年には、技法の体得が認められ「旭日双光章」を受章。戦前までは千葉家がある文字地区で10数軒が藍染めを行っていたが昭和40年ごろには千葉家ただ一軒となった。