一方…

中川村葛北地区の話し合い:
「10年後って言われたときに俺はもう10年後やっとる自信はないでね」
「広い農地でやる農業と中山間地でやる農業と違うと思うんですよ」
「国は何考えてるのって言いたい」

山に囲まれ、傾斜地が多く、狭い田畑が点在する中山間地を抱える長野県では、「農地集約」が難しい地域が多いのが現実です。

その「農地集約」を目指す国は2023年、法改正を行い、すべての市町村は、10年後の田畑をどう利用するか誰が耕すかを示す地図を作ります。

こうした地図を含む地域農業の10年後の計画を2025年3月末までに作成しなくてはなりません。


2023年の12月中旬、長野県南部の中川村。

「(机は)四角でいいの?」

およそ50世帯が暮らす葛北(かつらきた)地区では話し合いが開かれました。

(地図を囲みながら):
「ここが水路だ。地図にしてみると、わかんないですよね」

広げていたのは「目標地図」と呼ばれる、誰が10年後にどの農地を耕すかを示す地図です。


2023年の法改正で全国のすべての市町村がこの「目標地図」を含む地域の将来の農業の姿、いわゆる「地域計画」を2025年3月末までに作らなくてはならなくなりました。

進行役:
「地域計画ってことで、葛北の地図をちょっとこうやって色分けしてあります」
「緑色の色が塗ってあるのが、耕作条件が良くて10年後の担い手が決まっている農地になっています。黄色の農地なんですけども、傾斜等があり現状で耕作がされていないか、10年後の担い手が決まる見込みのない少ない農地になっています」

中川村は天竜川沿いの河岸段丘に位置し、段々畑でリンゴなどの果樹を、棚田でコメを栽培しています。


中でも、傾斜地で狭く、担い手が決まっていない田畑は、10年後の耕作が難しいとされ、「目標地図」では黄色に塗られています。


進行役:
「色を変えた方がいいんじゃないかっていう方がいましたら何なりと言ってもらいたい」
住民:
「10年後って言われたときに俺はもう10年後やっとる自信はないでね」
住民:
「今若くてもね、もうやらないという人が今増えてる。増えちゃってるよね。だからこういう黄色いところが増えてる」
住民:
「現況は自分の名前書いておいても、次の10年経ったら誰よったってさ、おるかっていったらおらんじゃない」
農業委員:
「その通りなんですけど、地区の方がどう考えるか、地区としてどうしたいかっていうのが一番かなと思ってます」

地域農業を牽引する農業委員が中心となり、話し合いをしながら色を決め、最終的には耕作する人の名前を書き入れていきます。

住民:
「この地図見たときにね、すごい問題があるんだよ。この黄色い地帯、これ人家があるところだぜ」
「この黄色いところがどんどん荒れていったら生活環境が荒れるってことなんだよ」

住宅周辺では自家用に野菜を栽培していますが、「目標地図」ではその畑の多くが黄色。

すなわち、10年後の担い手のめどが立っていません。