「仲がいい」「温厚な」夫婦だった…

「言い争いもなく、仲が良い」
「温厚だった」

施設職員や親族の証言調書によると、2人の関係はいたって良好だったようだ。弁護人によると、夫は妻の事を「お母さん」と呼んでいたという。

被告人質問で夫は、弁護人から「なぜ『お母さん』と心中しようと思ったのか」と問われると、当時の思いを口にした。

「とにかく生活が苦痛だという思いが強かった」
弁護人「お母さんは、いつごろから『死にたい』と言うようになりましたか」
「もともと好きだった料理ができなくなって。いろいろあって、心がまいっていたのだと思う」
弁護人「なぜ、犯行に至ったのですか」
「私もこういう(目が悪い)状況ですから。つらい状況を早く脱したかった」

そのうえで検察側は「介護士や定期的に面会に来る親族など、周囲に助けを求める努力を十分にしなかった」として懲役3年を求刑。

一方で弁護側は「病気やけがで弱った妻の思いを聞き入れるため、やむなく犯行に及んだ」として、執行猶予付きの判決を求めた。

裁判は争うことなく即日結審し、年明けに判決が言い渡されることになった。

裁判で夫は、後悔の言葉も口にしていた。

「(事件に至るまでに)心中以外の方法を考えるべきだった」
「余命を全うすべきなのに、自分のせいで…」

夫はあの時、どうすれば「心中」以外の方法にたどり着けたのだろうか。