「きょう、逝こう」
その夜、男は60年連れ添った妻との心中を決意した。しかし自分だけ死にきれなかった。そして、3か月後、妻を殺害した罪で1人、被告人席に座ることになった。
検察側が読み上げた罪状は、サービス付き高齢者向け住宅の一室で、当時83歳の妻に頼まれて首を絞めて殺害したという「嘱託殺人」。
施設職員や親族から見ても「仲が良かった」という夫婦に、何があったのか。
車いすで現れた89歳
2024年12月の初公判の日。刑務官に車いすを押されて89歳の男が法廷に現れた。男は同年9月16日の午後7時半ごろから翌朝までの間に、一緒に暮らす部屋で、妻に頼まれて首をスカーフで絞めて殺害した罪に問われた。
男は起訴内容を認め、その後、検察側が事件の経緯を明らかにした。












