ベテラン画家の妻が心配していたのは…? 命を懸けた修復作業

修復作業の最終年。実は入野さんの身体は、がんに侵されていました。泰子さんは、交通整理だけでなく、壁の汚れを落として画を描く前の下準備を手伝うという、まさ二人三脚の作業でした。
入野さんの妻・泰子さん:
「最後の40mをやらずに死ぬわけにいかないって、主人は本当に命懸けでやっていました」

その年のRCCのインタビューに、入野さんは「仕事をすると元気が出る。ここへ来ると。(完成して)来年からできないかと思ったら、ちょっと寂しい」と応えています。
描き変え作業を終えたのは、2013年5月31日。「絵巻」を元に描かれた壁画は、まさに「絵巻物」のような状態に仕上がりました。
そして翌日、入野さんは発熱し、その年の10月に亡くなりました。

壁画の中には、城下町の壁に鳥の絵を描く男性と、すぐそばに寄り添う女性の姿を見つけることができます。
2024年以降に始まる拘置所の建て替えで、壁画は取り壊される予定です。
妻の泰子さんら「保存の会」は、当初望んでいた現物保存については、あまりに高額な費用がかかるために断念。現在は、陶板画として復元し広島城近くで展示されることを望んでいます。

「保存の会」では、現物があるうちに、より多くの人に入野さんの思いを感じて欲しいと、見学会を開きます。
泰子さんは、「江戸時代の平和な時代だったと感じるような生命力を感じるような壁画。戦後、被爆によって色んなものがなくなってしまった広島が復興する生命力と重ね合わせて主人は書いたのではないか」と話します。
入野さんの下絵では描かれていたのに、実際の壁面には「描くべからず」とされたモチーフがなんだったのか? 当時を知る小林さんのガイドで聞くことができるはずです。
【広島拘置所外塀の壁画見学会】
10月29日(日) 午前10:00~ 午前11:00~ 正午~
●参加無料 ●予約不要