ことし2月、下書きを完成させ、実際のキャンバスに絵を描き始めました。

福本あおい さん
「やっぱり全然サイズ感がわからないのが1番多くて、体型を今まで解剖学の本を見て書こうと思っていたけれど、それで書いていたら今の健康的な体つきになってしまって…」

実際のポーズを友だちに写真に撮ってもらったり、戦時中の写真の本を読んだりして研究しました。絵を描き初めて半年余りが経ちました。

廣中正樹 さん
「ガラスがこう(背中に)入れてな、お父さんの目も後ろ向きのような感じで」

― 振り向いている感じで。
「そうよな」

福本あおい さん
「廣中さんが見たものが本当じゃないですか。ここはこういう感じだったのでは?と違う解釈をしてしまって、どんどんはずれていってしまう。すごく難しいところがあって」

証言を聞くだけで絵で表現することの難しさをあらためて痛感します。数日後、美術室を訪ねると、完成に近づいていたはずの絵を1人、塗りつぶす福本さんの姿がありました。

福本あおい さん
「正直、今まで絵になんか納得できていない自分がいて、いちから書き直して、自分と廣中さんの納得がいくように…」

体の大きさや向き・表情まで廣中さんの記憶を忠実に再現するため、家族に当時の状況を演じてもらいました。

廣中正樹 さん
「おお、すげえな。よく描けとる」

顔や背中のやけどの描写では本物のやけどの写真の資料を参考にしたといいます。

福本あおい さん
「この絵に込めた思いなんですけど、本当に戦争は心が痛む話なんだなと感じながら描いた」

廣中さんの体験に少しでも近づけたい、その一心で 休日は朝から晩まで筆を動かしました。そして、この夏、何度も悩んで書き直した原爆の絵が完成しました。

廣中正樹 さん
「手を合わせるだけ。ほんま、感謝感謝。よう描いてくれた。この絵を見て、親がどういう思いでこんなことをさせているのかの気持ちを想像してほしい」

福本あおい さん
「自分の考えと実際にあったことは全然違うと感じた。先入観にとらわれずに描くという能力が身についたし、(この絵で)戦争することの『痛み』を1番伝えられたらなと考えています」

「原爆の絵」に挑戦しなければ、知ることのできなかった戦争の痛みや、記録に残すことの難しさ…。福本さんは、1人でも多くの人にこの絵があってよかったと感じてもらえることを願っています。