青山敏弘の引退試合で“選手交代”に込めたメッセージ
スキッベ監督を取材してきて印象的なシーンがある。就任3年目の2024年シーズン終盤、広島一筋21年のバンディエラ青山敏弘が引退を発表。

サッカースタジアムの完成を待ちわびてきた青山だったが、この年、中盤ではMF松本泰志が不動のレギュラーを掴み、8月には海外から川辺駿が復帰。青山のリーグ戦での起用はわずか2試合で記録上2分のみだった。
優勝の可能性を残すためにも負けられない大事な12月1日のホーム最終戦。札幌を相手に4対1とリードした後半37分にスキッベ監督が動く。青山をピースウイングのピッチへ送り出した。交代したのは川辺駿。青山から背番号6を託されることになる広島生まれの男だった。
試合後の会見。指揮官に青山選手を投入する時の交代に込めた思いを質問した。返ってきた答えは『この試合に関しては(交代選手を)決めていた。もう1つ考えていたのは、(中島)洋太朗とアオ(青山敏弘)が同じフィールドに立つこと』だった。

青山投入の約10分前にピッチに立っていたのが父がサンフレOBの中島洋太朗(当時18歳)。青山と川辺の関係性だけでなく、2006年にJ1デビューを果たした青山とその年に生まれた中島が同時にピースウイングのピッチに立つ意味まで指揮官は考えていた。
もちろん交代選手がゲームを決めることは多々あったが、これこそ育成型クラブの理念を理解したスキッベ監督の記憶に刻んでおきたい采配だった。


































