重い病気のある子どもとその家族の旅行をサポートするプロジェクトがあります。
医療的ケアが必要な女の子と家族の2泊3日の沖縄旅行に密着しました。
観光客でごった返す那覇空港。
出迎えるボランティア「せーの、めんそーれー」
にぎやかな歓迎を受けていたのは、埼玉県の峯尾さん一家です。

友梨ちゃんの母 峯尾志穂さん「友梨ちゃんが3歳の時に来たことがあるんですけど、医療のケアが増えてからはすごく久しぶりの旅行になる」
峯尾家の長女で、小学2年生の友梨ちゃんは「アイカルディ症候群」と呼ばれる難病で、自分で移動したり、言葉を話すことはできません。

今回、ボランティアのサポートを受けて、2泊3日の家族旅行にチャレンジしました。
最初の目的地に到着です。
友梨ちゃんの父 峯尾和久さん「暑いなぁ、あっついー」
しきりに暑さを気にしていた友梨ちゃんのお父さん。友梨ちゃんは、自分で体温調節をすることができないため、強い日差しは大敵です。
慎重に日よけをしながらビーチに向かうと、ボランティアたちが、昼食のBBQを用意していました。
峯尾家の家族旅行をサポートするのは、医師や看護師、介護士などで、医療従事者が大半を占めます。友梨ちゃんの両親に代わって、たんの吸引や、胃ろうから食事や水分を注入するのをサポートします。

友梨ちゃんの母 志穂さん「食事をみんなで一緒にゆっくり、とれるのがうれしいです。いつも医療のことしちゃうから、落ち着きがなくなっちゃって」
重い病気の子どもの旅行支援を企画した小児科医の宮本二郎さんは、友梨ちゃんの主治医でもあります。宮本さんは、琉大医学部を卒業後、小児がんの治療にあたったのち、緩和ケアについて学んできました。
現在は、沖縄と東京で訪問診療に携わりながら、3年後の「こどもホスピス」開業を目指しています。
今回は、建物ができるまでの間も「こどもホスピスのようなもの」を試験的に提供しようと企画しました。
小児科医 宮本二郎さん「こどもホスピスっていうのは、子どもが病気とか障害があっても生き生きと過ごす場所。生命に限りがある子たちとか、いつ何があるかわかんないって子たちには、安全のためにこれはやめとこうってしてると、生き生きと過ごすっていうことは、少しやっぱり優先順位が下がってきちゃって、そういうときにこどもホスピスっていうものがあって、そこでサポートすることができれば、そこで生き生きと過ごす子たちが家族っているのかなって思っていて」

4か月前から打ち合わせを重ねてきた旅行プランでは、普段はできないようなことにも、少しチャレンジしてもらうことにしました。
小児科医 宮本二郎さん「こっちの下側から入ってくる可能性があるから、上よりは下のほうが」
友梨ちゃんが挑戦したのは、海水浴!気管切開をしているため、呼吸のための管に水が入らないようにする必要があります。また、急な環境の変化により、けいれんを起こす可能性も。
慎重に、水の感触に慣れさせていきます。徐々に、緊張もほぐれ、リラックスした表情になっていきました。

普段できないことに挑戦するのは、友梨ちゃんだけでありません。家族は別行動でシュノーケリングです。
二日目は、朝から北部へ。
涼しい水族館のなかで、海の生き物に興味津々な友梨ちゃんでしたが、屋外に出ると…
この日の最高気温は32.5度。保冷剤で体温を下げながら過ごします。
夕方、友梨ちゃんと弟の駿君にサプライズが待っていました。
クラウンの登場です。

大勢の人たちと楽しい時間を過ごす子どもたち。
そこには、両親の姿はありません。
実はこの時間に、両親には、二人きりのディナーを楽しんでもらおうと、ボランティアの計らいがあったのです。
二人きりの外食は7年ぶりという両親は…
友梨ちゃんの父 和久さん「今日は本当、うれしすぎました。2人で、お酒飲む機会といいますか、おそらく、友梨ちゃんが生まれてからはないよね」

友梨ちゃんの母 志穂さん「ボランティアさんたちが、自然に介入してくれたから、何か自分たちが病気の子どもの親だってことも忘れられたし、家族で過ごす時間を、なんかもっとより面白く作ってくださったから、もうびっくりでした」

2泊3日の沖縄旅行も、あっという間に終わりの時が。友梨ちゃんの体調も問題なく、家族が穏やかな時間を過ごすことができました。
友梨ちゃんの父 和久さん「本当にあの幸せな3日間が過ごせたなと思ってます。友梨のために、これからも家族みんなでもっともっと楽しく過ごしていきたいなと思いました」

【記者MEMO】
旅行支援を企画した小児科医の宮本さんは、「何かに挑戦したり、生き生きと過ごした体験が、生活に多くの制限がかかる子どもと家族のこれからを支えてくれる」と話していて、こうしたご家族の楽しい思い出づくりのサポートを今後も続けていきたいと話していました。