戦争の記憶がトラウマとなり、不眠や体の痛みなどの症状が現れる『戦争PTSD』。10歳のときに沖縄戦を経験した語り部の女性も、よみがえる記憶によって眠れなくなる症状に悩まされています。戦争体験者の内側でくすぶり続ける心の傷に迫りました。

半世紀に渡り悩まされる『不眠』 心に残る戦争の記憶

「転がってる死体、ジクジクの死体、骨だけの死体、真っ白になるほど蛆がたかっている死体。自分の目で確かめた、自分の目の前で起こったことはしっかり憶えています。10歳ですから」

大阪から来た修学旅行生に話をする玉木利枝子さん(89)。10歳のときに経験した沖縄戦で、8人の家族を失いました。

玉木利枝子さん(89)
「その砲弾がやんだか、やまないかの時に、祖父が『うーん』ってうめいた。『おじいちゃん?』やられた。目の前が真っ暗になりました。その時、私が聞いた祖父の声というのは、とてもこの世の人間の声とは思えない、祖父の断末魔の声でした」

沖縄戦の「語り部」として、講話活動を続ける玉木さん。30代の頃から不眠の症状が続いているといいます。

玉木利枝子さん(89)
「きっかけは、若くして主人に逝かれたことがきっかけなんでしょうけど、例えば寝るとき、そういうことがきっかけなはずなのに、思い浮かぶのは戦争で亡くなった家族のことなんですね」

30代のとき、夫が亡くなったことをきっかけに、夜寝ようとすると、戦場での記憶が蘇ってくるようになりました。

沖縄戦から20年以上が経過していましたー

玉木利枝子さん(89)
「考えないようにしようとすればするほど、そういうのが浮かんでくる。なんとか振り払って『寝るぞ寝るぞ』と思っている」