身の潔白示すため「金融警察」に1600万円送金
その後、電話口に現れたのは検察庁の検事、沖田理子を名乗る人物。ビデオ通話を通じて、偽物の身分証明書を提示されました。Aさんは、捜査情報を第三者に口外しない約束をさせられ、2週間で身の潔白を証明できるという、「優先調査」の提案に応じて、必要な費用を送金しました。
▼被害にあったAさん(30代)
「生活費、緊急で使うお金など全部、『金融警察』と呼ばれるところに送りました。1600万円ぐらいです」
この日から、犯行グループによるAさんの監視生活が始まりました。
「家きれいですね、息子さんかわいいですね、と言われました。見られているなと思いました。『今、一緒にいる人は誰ですか』とメールで聞かれました」
24時間ビデオ通話をつなぎ、日々のスケジュールを報告させられました。そんな監視生活が始まって約2週間後―。
「『あなたの口座が、新たに摘発されたグループにもありました。優先調査を始めるには、2300万円を納めてください』と言われました」
さらに金を要求されたAさん。義母に頼み込み、2000万円を借りました。それでも足りず、息子の学資保険を解約。この解約金のほか、金融機関4社から約30万円ずつ借りて新たに450万かき集め、送金しました。
全ての金が戻り、「優先調査」によって身の潔白が証明できると信じ込んでいたAさん。その後、説得されて警察署を訪れ、ようやく被害に気が付きました。
「お金を貸してくれた義母に、生きているうちに全額返済したいです。息子が生まれてからずっと貯めていた学資保険を解約したのが、すごく悔しい……。働いて必ずどうにか取り返します」
公権力をかたって恐怖心を煽り、被害者を陥れる悪質な犯行。「次の被害者は自分かもしれない」と、危機感を持つ必要があります。