▼被害にあったAさん(30代)
「(監視されている間は)むしろ守られている。ヤクザとか危ない人たちから、私は警察に保護されているんだという感覚でいました」

詐欺で全ての貯金を奪われたAさん。1か月半続いた犯行グループによる監視生活は、1本の電話から始まりました。

「あなたの電話が2時間後に止まります」と告げられ、音声ガイダンスに従うと、携帯電話会社の職員を名乗る人物から「あなたのメールアドレスから数億人に迷惑メールが送られている。被害届が殺到している。電話を止める」と説明を受けました。



人違いだと訴えると、警察に届け出るよう促され、電話をつないだまま指示通りにスマートフォンを操作しました。

「『110#を押してください』と言われて、その場で押しました。すると、福岡県のバンドウユタカという刑事につながりました」

自宅に家族がいることを伝えると、刑事を名乗る人物は別の場所に移るよう誘導。家族から話しかけられない密室・車へと、Aさんは移動させられました。すると、犯罪で不当に得た収益の出どころを分からなくする、“資金洗浄事件”の容疑者であると告げられました。



「『三井住友銀行の口座に1億5400万円が入っていて、マネーロンダリングや詐欺で使っているお金が入っている』と言われました。19人から被害届が出ていて、1人につき22日間勾留しないといけないから、『あなたは明日から、福岡の裁判所の隣に勾留されます』と言われました。子どももいるし、もう目の前が真っ白になりました」

「明日から子どもの弁当は、誰が作るんだろう」。真っ先に脳裏をよぎったのは、息子のことでした。刑事を名乗るバンドウユタカが語ったのは、テレビや新聞で報道される詐欺の典型的なストーリーでしたが、海外ニュースを中心にみるAさんが、疑問を持つことはありませんでした。