9月11日に投開票された、北谷町議会議員選挙に立候補した仲宗根由美(なかそね ゆみ)さん36歳。有機フッ素化合物・PFAS(ピーファス)汚染の問題を訴え初めて出馬を決意しました。


北谷町議選に初めて挑戦 仲宗根由美さん
「今までの選挙の形をやってきて今この社会になっているから、それが嫌なんですよ。だから私が一人の母親としてできる状態でやることをやって議会に入ることが意味のあることだと思っています」
当選に必要な「三バン」。地盤(組織)、看板(知名度)、カバン(予算)を持たない母親が選挙戦に挑みました。
仲宗根さん
「おはようございます、おはようございます。よろしくお願いします」
告示日の朝、いつも通り子どもを保育園に送る由美さん。1歳、3歳、5歳の3人の子どもを育てる母親です。
仲宗根さん
「きょうも朝いつもと同じドタバタが始まって、そして平常心を取り戻したというか、起きた時は一瞬緊張したんですけど」
由美さんには選挙に出ると決めたとき決意したことがあります。


仲宗根さん
「選挙の仕組み自体が子育てする女性向けに作られていないなって思っていて、身の丈に合ったというかライフスタイルに合ったやり方でやる」
選挙には習わしのような独特の戦い方があります。例えば通勤ラッシュに合わせた『早朝の手ぶり』です。
仲宗根さん
「子どもたちに朝ご飯あげて保育園の準備して出て、全部終わるのが9時ぐらいなので、7時半から手ふりをする当たり前の習わしが、お母さん向けには作られていないというか」
由美さんは「選挙カー」も使いません。自分の名前をマグネットで張っただけの自家用車を使います。名前を連呼するスピーカーなどのレンタル代が10万円もかかると言われたからです。
仲宗根さん
「は?みたいな感じになって5日間で10万円。10万円出したところでその効果ってどれだけあるのって感じなんですよ」
所属で出馬する由美さんは組織力も予算もありません。運動員は友人や家族だけ。
別の選対の男性「あんたのところは選対も面倒見てくれる人いないの」
仲宗根さん「全然選対とかないですよ」
別の選対の男性「教えてあげればよかった」

でも組織力はなくても『強いつながり』はあります。友人が仲宗根さんのもとに夕飯のおかずを届けに訪れます。
仲宗根さん
「ありがとう、汁物うれしい。茶色いんだけど、うれしい…」
玉城さん
「子どもたちや旦那さんと話しをする時間も無くなるだろうなと思って少しでも家族との時間が取れたらなと思って」
仲宗根さんは、友人らの助けも借りながら手作りの選挙戦を展開していきます。
仲宗根さん
「私がなぜここに立っているかというと主にはやはり水問題です。これは保守も革新も関係ないです、人として生きる以上この問題を避けては通れないです。もっとこんな街にしたい、経済もこうしたいもあります。でもその前に私たちの健康や命が守られないと、それが実現しないと思っています、だから私はまず水問題を真剣に取り組みたいと思っています」

仲宗根さんの訴えに、次第に足を止めて耳を傾ける人たちが増えていました。
慌ただしく自分なりの選挙戦を展開する仲宗根さんですが、1歳の息子にはまだ授乳が必要です。それでも選挙戦に挑むのにはこんな思いがあります。
仲宗根さん
「次の人が自分もできるかもって思うようにしたいなって思います。(母親という立場が)それが不利になったらいやですしね。誰がお母さんの声を届けるのってなっちゃう」
母親のライフスタイルに合った戦い方にこだわって、それを次世代につなげたい。妻の熱意手に夫の祐輔さんも応援したいと話します。
夫・祐輔さん
「基本は妻に振り回されるんですけど、それが自分たちの家族のスタイルみたいになっているので、パワフルなんですね、人を巻き込む力があって人が好きなので」
選挙戦の最中、北谷町ではなく読谷村にきた由美さん。同じ母として初出馬した読谷村議候補の与那覇沙姫さんの応援をするためです。

直接票に結びつかなくても『女性の前に立ちはだかる壁を壊したい』そう思っています。
読谷村議選に出馬 与那覇沙姫さん
「ただただ議会に女性がいなさすぎる。なんかそれってバランスが悪いんですよね」

仲宗根さん
「議会のその場も社会の縮図でないとそれぞれの声が届かないんですよ。そういう普通の人の声が届くためには普通の人が議会に入らないと本当に思います」
「選挙って遠いとか他人事とか、だれかに任せていればいいとか、どうせみんな同じこと言っているんでしょうとか、そういうことを思う人もいると思います。でも沙姫さんは本当に違う本当に真剣だし」
懸命に走りぬいた選挙戦。投開票日を迎え、時刻は夜の12時を過ぎたところでした。
「なに当選してる?本当?やあ、うれしい」

589票を獲得した仲宗根さん。北谷町議会議員選挙に初当選を果たしました。
北谷町議に初当選 仲宗根由美さん
「本当にいろいろあった、自分のやり方でやりたいと思ってやることでいろんな声があって、選挙をなめるな的なことも言われて、私は本当に選挙をやるために必要なものをすべてを持っていない、普通のお母さんの一人です。それでもこうやって結果が出せました」
母親目線を生かして、由美さんはこれからも町のために走り続けます
【記者MEMO】
昨年度の統計では沖縄県内の市町村議員の女性の割合は10.6%で全国平均を大きく下回っていました。
9月11日に行われた地方統一選挙では県知事選挙のほか、4首長選挙と、24市町村議員選挙が行われました。24市町村議選の当選者内訳を見ると、女性の当選者は49人で全当選者に占める女性の割合は14.1%で過去最大となるなど、昨年度より3.5ポイント増加しました。
仲宗根さんが当選した北谷町は定数19に対して、立候補した女性7人全員が当選した。当選者に占める女性の割合は36.8%となりました。
今回の地方選女性や若い世代の躍進が少しずつ増えていて、選挙戦の形がこれから変わっていくような気がします。仲宗根さんは議会は社会の縮図であるべきと話していましたが、様々な立場の人たちが政治参加するためにはどんな仕組みが必要なのか選挙戦の転換期に来ているような気がします。