介護支援の環境を整えるも症状進行で大好物「とり天」が…
ALS患者は気管切開して人工呼吸器をつければ10年以上生きると言われていますが、その代わりに「声」を失うことになります。

ニュージーランドでは積極的な治療を行わない緩和ケアが一般的だということです。このためサイモンさんは日本で気管切開の手術を受けることを決めました。
彩香さん:
「日本はALSになっても社会とつながって活躍されている方がとても多いのでびっくりしました。ニュージーランドは緩和ケアが主流ですが、本人が『気管切開してでも長く生きたい』と言ったので、日本に行くことにしました」
在宅生活を支えているのは障害者の自立を支援するNPOの押切真人さんです。ニュージーランドにいる頃からサイモンさん夫婦とやりとりし、朝8時から夜8時まで医療や介護支援が受けられる環境を整えてくれました。
押切真人さん:
「彩香さん1人じゃ無理だと思うのでチームを作って、安心安全に地域に定着して継続していけるような体制を整えていきたい。ニュージーランドより楽しい生活が送れると思う」
サイモンさん(視線入力):
「ここなら自分に何か起こっても、とても安心できます」
一方でサイモンさんの症状は予想以上に早く進行しています。別府に来た当初、グルメのサイモンさんは大分のおいしい料理を食べたいと考えていました。取材に対しサイモンさんは「口で食べられる間においしい地元の料理を全部食べてみたい」と明かし、彩香さんも「彼はとり天が一番好きなんです」と教えてくれました。

しかし、その2か月後、食べ物を飲み込むのが難しくなり、胃ろうによる栄養摂取が欠かせなくなっていました。毎日動かない体を他人に預けるサイモンさんは、希望通りの介助をしてもらえないこともあり、彩香さんが本音をぶつけられる唯一の存在となっています。
彩香さん:
「本人が動けないし一番大変だと思う。声も出しにくいし、伝えても伝わらないこともあるので。ヘルパーさんには言えないことも、私には言える」

病気を通して日々絆を築きあげている2人。今後は旅行に出かけたり、他のALSの患者とつながったりしたいと考えています。
彩香さん:
「暖かくなったら旅行に行きたい。大分だったら高崎山のサルが見たいらしい」
進行性の難病に向き合いながら、2人は生き抜く覚悟を新たにしています。






















