数値基準の導入に期待と不安

悪質な運転による死傷事故を適正に処罰するため、鈴木法務大臣は危険運転致死傷罪の見直しを2月10日の法制審議会に諮問すると明らかにしています。

具体的には、血中のアルコール濃度が基準を超えた状態での車の運転や、法定速度以上の速さでの運転などについて、数値基準の設定を含め議論が行われます。

これまでに10件を超える危険運転の裁判を担当した弁護士は、数値基準を設けることで適用ハードルが下がる一方、問題点も生じると指摘します。

アトム市川船橋法律事務所 高橋裕樹弁護士:
「今の危険運転致死傷罪は、高速度での事故のケースが特に問題となっています。適用要件が『制御困難な高速度』となっていて、警察も判断を迷うこともあり、条文の曖昧さが指摘されています」

「アルコールの体内度数や速度オーバーの数値基準を明確にすれば、一般の人はわかりやすくなると思います。ただアルコールの強い人、弱い人もいるし、体調の影響も受けると考えられます。速度についても10キロ、20キロオーバーでも山道だったら危険ですよね。こうしたことから速度やアルコールを一定にしてしまうことで、逆に処罰すべき案件を取り逃してしまうリスクが出てくるのではないかと思います」

佐藤さんは数値基準の導入に賛同しています。

佐藤悦子さん:
「21年前に数値基準があれば危険運転に問えたかもしれない。『なぜ危険運転に問えないの?』という闘いを続けてきたので。いろんな活動をしなくても一発で危険運転になっていたかもしれない…そう思うとメリットがあると思っています」

一方で佐藤さんは、飲酒運転の加害者が逃走するケースが増えるのではないかと不安を示しています。

佐藤悦子さん:
「飲酒運転で事故を起こして加害者が逃走し、時間が経って出頭してきたり、逮捕されたりした場合、アルコールの量がどのくらいか分からない状況になってしまいます。もしかしたら逃げてしまう人がもっと増えるかもしれない。そういった場合はどう対応するのか懸念しています」

「1滴のお酒でも飲んで運転することは、過失ではなく故意犯だと思っています。『飲酒運転は絶対してはいけない』そのことを子どもから大人まで理解してほしいと思います」