源泉数、湧出量ともに全国1位で、『日本一のおんせん県』をうたう大分県ですが、温泉が出ない街があります。県南に位置する豊後大野市です。こうした状況の中、観光客の取り込みを図ろうと注目したのが“サウナ”。『温泉はないけど“サウナ”はある』として市は全国で初めて「サウナのまち」を宣言。ユニークな施設が続々と登場していて、今年2月にはシイタケ尽くしのサウナが新しくオープンしました。その背景には日本一を誇る地場産業が抱える大きな課題がありました。
豊後大野市にある「ロッジきよかわ」。2月17日に「なばサウナ」という新しいサウナ施設を完成させました。

“なば”は大分弁でシイタケを意味し、建物もサウナキャップもシイタケをモチーフにしているコミカルな施設です。燃料となる薪にもこだわりがあります。
ロッジきよかわ・江副雄貴さん:
「クヌギは持ちがいいんですよ。火力も安定しいるので、クヌギの薪が一番重宝しますね」
実はサウナで使う薪は、地元でシイタケ栽培のために伐採したものの、利用価値のないクヌギを有効活用しています。
三重林業研究グループ・山口修一会長:
「クヌギは建築材料にはまったくならないです。薪にするか、シイタケを作るくらい」
大分の乾シイタケは質・量ともに日本一を誇る一大産地として知られていますが、高齢化による担い手不足が深刻化しています。このため山の管理ができず、クヌギを伐採することで、新芽が出てくる循環型農業にも影響が出ています。さらに、シイタケの原木は樹齢15年ほどのクヌギが使われるため、伐採時期を過ぎれば、未利用材が増えてしまうということです。
農家・首藤岩光さん:
「切らない山がだんだん増えてきて、大きくなり過ぎている。今はサウナがけっこう人気があるから切って役立てたい」

こうしたサウナ需要を産業連携につなげる試みに『サウナのまち』を掲げる豊後大野市も大きな期待を寄せています。
豊後大野市商工観光課・黒木優太さん:
「アウトドアサウナと豊後大野市の基幹産業である農業との連携が特徴で、地域内での仕事やお金の循環が生まれることを期待しています」
なばサウナのオープン後、さっそく愛好家らが訪れ、地元でとれた高品質の薪でじっくり温められた施設を満喫していました。評価も上々で、利用者にはシイタケの出汁スープや料理も提供されています。また近くにある「道の駅きよかわ」で使える割引チケットも配られていて、乾シイタケや加工食品の需要喚起にも一役買っています。
ロッジきよかわ・江副雄貴さん:
「もっとシイタケを切り口に産業間連携を進めていくことができる。シイタケというものが加わることで、より関われる事業者が増えてきて、いろいろなアイデアがここで生まれてくるので、しっかり形にしていきたい」
観光振興から地域へと裾野を広げる『サウナのまち』。利用者の心身はもちろん、基幹産業の環境も「ととのう」ことに期待が寄せられています。