「シャッター街になりかけている」こう話すのは大分県別府市にある「やよい商店街振興組合」の関係者。かつて、人混みだらけだった商店街に再び活気を取り戻そうと、新たな戦略を打ち出しました。家賃は月額5千円、街の一角に屋台をつくって経営者を募集。地元の大学生が名乗りをあげ、コーヒーショップをオープンさせました。

コーヒーショップ経営者は大学生

別府やよい商店街の一画に、2月10日にオープンしたコーヒーショップ「TUMUGU COFFEE STAND」を経営しているのは、地元の立命館アジア太平洋大学に通う1年の金澤宏高さん(19)です。

(金澤宏高さん)「コーヒーを通じてお客様と話す時間が大好きで、コーヒーを一緒に楽しめる時間が作り出せて、うれしいです」

金澤宏高さん

市民や観光客に親しまれてきた「やよい商店街」は、最盛期の頃に比べて人通りの減少や経営者の高齢化により、かつてのにぎわいはみられません。

(商店街の経営者)「昔は人混みをかき分けて、学校からの帰りに家に入らないといけないので、入口を見失うこともありました」「もう少し、昼間に営業するお店が増えるといいと思う」

1988年

こうした中、商店街振興組合はかつての活気を取り戻そうと、新たな戦略を打ち出しました。商店街の一角に木造の屋台を用意。組合には家賃として月に5千円を支払うという条件で、大学生を対象に起業経験できるチャレンジ企画の募集を開始しました。

採用された金澤さんの企画は、他の3人の同級生とコーヒーショップを共同経営するというもので、経営手法などの中身が評価されました。店舗を開店する際の許可の取り方や収支報告書の作成方法などについては、振興組合の関係者が一から丁寧にアドバイスしました。

店がオープンするのは土、日、祝日で、営業時間は午前9時からコーヒー豆がなくなるまでです。

大学と連携…地域課題の解決へ

(別府やよい商店街振興組合・河野悟理事)「今回の取り組みは、シャッター街になりかけているので、街おこしの一環ということと、経営を学ぶ学生たちがチャレンジすることで、いろんなことを学び、10年後、20年後も世代交代がうまく進んでいくことを目指しています」

(金澤宏高さん)「卒業までにコーヒー屋を実際の店舗で経営したいと思っていて、経営について知らなかった知識を商店街の皆さんが、カバーしてくれて教えてくるのは、すごくありがたい」

金澤さんは高校時代に喫茶店で飲んだ一杯が忘れられず、独学で試行錯誤を繰り返し、コーヒーの作り方を研究してきました。取材した日も多くの地元住民や観光客らが訪れて、コーヒーを楽しんでいました。

(来店者)「こういったコミュニティ、触れあえる場を作ってくれているのがいいと思う」「誰でも来ることができる、親しみやすい雰囲気でとてもいいお店だと思います」

あらゆる人とコーヒーを通して、交流したいという思いからスタート。店の利用者には外国人もいますが、持ち前の英語力をいかして対応します。

(金澤宏高さん)「観光都市の別府だけあって、いろんな国のお客さんがおられるが、大学で留学生と英語で会話をする経験が生かされていると思う。別府の地域の方とAPUの学生と観光客の方々が一つになり、元気になって、やよい商店街が最高だなと思ってほしい」

かつてのにぎわいを取り戻すため、商店街振興組合は今後も地元大学と連携を図ることにしていて、地域課題の解決に向けた模索が続きます。

(河野悟理事)「非常にたくさんの地元の方から声をかけていただいているし、観光客も意外とすっと入っていただけています。別府在住の学生といろんな話をして、観光面の印象を良くして、帰っていただきたい」