いくらかかる?- 東京都は10万円助成へ

無痛分娩で気になるのが高額な費用だ。無痛分娩は保険適用外になるため、麻酔などの費用は自己負担となる。

病院の規模や種類、地域によっても異なるが、無痛分娩の費用相場は約7万~20万円と言われていて、出産時にはこの無痛分娩費用のほかに、通常の分娩費用がかかる。

厚生労働省によると、2022年度における正常分娩の費用は、地域によって変わり、最も高い東京都は60万5,261円、最も安い熊本県は36万1,184円と、20万円以上もの差がある。長崎県は、43万3,057円だ。 (厚生労働省「出産費用の見える化等」~)

東京都の小池知事は少子化対策の一環として、2025年10月から無痛分娩の費用を「最大10万円」助成する方針を示した。

長崎県こども家庭課は、「各市町の助成状況について把握しておらず、現状、無痛分娩費用の助成の検討は行っていない」としている。

無痛分娩の費用負担が少しでも軽減されれば、「お産が怖い」「産みたいけど不安」という声に応える社会的な後押しになるかもしれない。“出産=痛くて当然”を変える動きは今後広がっていくのか。

どこでもできる?長崎県ではわずか5件

JALAに登録している「無痛分娩ができる施設」は、長崎県内では5件(長崎市1件、佐世保市3件、島原市1件)。

なお、胎児がとても大きい・母に重度の高血圧がある・大きい子宮筋腫がある・母の著しい体重増加など、リスクや妊娠経過によっては無痛分娩ができない場合もある。

「出産したいと思う人が増えてくれたら」

「無痛分娩」は、すべての妊婦に必須のものではなく、あくまで希望する妊婦が選択する分娩法。出産時の母体の負担が少なく、出産後の回復も早い「無痛分娩」は、世界で広く普及している。

日本では、費用面の負担が大きいという一面があるものの、出産の痛みに対する不安を軽減することにつながる選択肢だ。

しもむら産婦人科 下村修医師
「出産の痛みに対してマイナスなイメージを持っているために、出産することを悩んでいる人がいるのならば、そのイメージを改善するお手伝いが出来ればと思います。少子化が進む中、無痛分娩によって、少しでも‘お産をしよう’と思う人が増えてくれたら嬉しいです。分娩麻酔に精通した医師がいる施設で、安心して無痛分娩を受けてくれればと思います。」

第2子出産で「無痛分娩」を選択し、途中麻酔を止めながらも出産にこぎつけた女性。その後、第3子出産時も無痛分娩を選択した。しかし第3子は、麻酔をしようと分娩台にのった瞬間に、スルリと生まれたため、麻酔が間に合わなかった。安産だった。

「痛みを和らげて産みたい」ーーそれは、甘えでもわがままでもない。“安心して産める”という当たり前を、選べる社会へ。